下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
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駅の敷地内に入るのに5000ドン、約25円を払う。こういうところは抜け目がない
駅の敷地内に入るのに5000ドン、約25円を払う。こういうところは抜け目がない

 さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第43回はベトナム・ダラット駅から。

【今や観光地となったダラット駅はこちら】

*  *  *

 ベトナムという国には似合わない駅だった。だからだろうか。ダラット駅は観光地のひとつになっていた。

 ハノイ、サイゴン、ドンダン、ハイフォン……。ベトナムではさまざまな駅舎を眺めてきたが、どの駅も味気なかった。ビル型の駅が多い。ハイフォンは少し趣があったが、ただ古いといわれれば返す言葉もない。

 ベトナムに駅には、ヨーロッパの駅のような気品や建築美があるわけではない。機能重視といったら、それも違う気がする。どこまでも中途半端なのだ。

 しかしダラット駅は違う。フランスが建てた駅なのだ。

 植民地時代、フランスはダラット周辺に住む少数民族を蹴散らし、避暑地をつくった。標高1500メートル。やはり涼しい。彼らは、川を堰き止めて湖をつくり、湖畔を公園にした。教会を建て、松林のなかに別荘が次々にできあがった。

 そして鉄道を建設した。海岸に近いタップチャップ駅から線路を敷き、ダラット駅をつくった。開通は1932年である。

 どこかおとぎの国の駅のような雰囲気が伝わってくる。これがフランス人の感性ということらしい。

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下川さんが感じた「たくましさ」とは?