これを食べなきゃ新年を迎えた気がしない! そんな、お正月に食べたくなる定番料理は誰にでもあるはず。縁起物でもある正月料理は、実は地域によって、または家族のルーツによって大きく違うという。AERA dot.編集部が昨年12月に行ったアンケートから、国内外の正月料理を紹介する。
定番のおせち料理といえば、黒豆や数の子、田作り(ごまめ)などの祝いざかなのほか、伊達巻きやお煮しめなど。特に雑煮には地域色が色濃く出ることがアンケート結果からわかる。
<お雑煮>
大きく分けると、関東風はしょうゆ、関西風は白味噌で味付けするとされる。家庭料理家の本田明子さんはこう解説する。
「一般的には東京はだしに塩としょうゆで味付けし、具材は鶏肉と小松菜が基本。海沿いの地域ではエビ、下町では伊達巻、小田原のほうではかまぼこを入れることもあるようです。一方で、大阪は白味噌のおつゆに京ニンジンと大根と里芋。これは無くなりつつある文化ですが、2日目には水菜のおすましを食べます」
アンケートでも近畿地方在住者から「白味噌のお雑煮」という回答がいくつも寄せられたが、「徳島も白味噌ベース」という声や、東北地方からは「焼きハゼでだしを取ったお雑煮」という声も。
全国各地でおせち料理の講座を開き、お雑煮事情を聞いて回ったという本田さんは、「実は同じ県でも地域によって具材や味が全然違い、お母さんのルーツによっても家庭の味が変わってくる。一括りにできないのがお“雑”煮なのです」と話す。
例えば広島県を訪れると、海側に住む人たちは「カキを必ず入れる」が、山沿いの人はそうではなかったり、昆布だしに芹、おかかを盛るだけというシンプルな雑煮が多い石川県では、能登では岩のりだけに変わり、金沢のほうではエビを入れるなど県内でも大きく違いがあったという。
「具材が白菜だけなど、シンプルな雑煮を作る人たちの中には恥ずかしがってなかなか教えてくれない方もいました。豪華な地域の人がそれを小バカにする風潮もありますね。でも、食文化には必ず意味があり、どちらが正しいかということではありません。結婚すると相手の家の味を知りますし、それを受け入れて楽しむのも大事です。おせち料理は買う習慣が広がっていますが、雑煮だけは家庭の味が残っていますから」(本田さん)