サヨナラの内野安打を放ち、終止符を打った広島・安部 (c)朝日新聞社
サヨナラの内野安打を放ち、終止符を打った広島・安部 (c)朝日新聞社
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 気がつけば、2月1日のキャンプインまであと1ヵ月を切った。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「四死球&危険球編」である。

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 大量点が入る試合は、ほとんどの場合、四球やエラー絡みだが、4月1日の阪神vs広島(マツダスタジアム)もご多分に漏れず、“与四球合戦”とも言うべき大乱戦になった。

 広島の先発・岡田明丈は初回、先頭の高山俊をストレートの四球で歩かせたことをきっかけに、いきなり4失点。2回にも先頭の高山から3連続四球で無死満塁のピンチを招き、内野ゴロと犠飛で2失点。4回も2死から連続四球を与えるなど、自己ワーストの6失点、7四球と乱れに乱れ、無念の降板となった。

 一方、阪神の先発・岩貞祐太も、岡田同様、ピリッとしない。四球の走者を出した直後に2度も本塁打を浴び、5回を5四球、5失点と1点差まで詰め寄られて降板した。そして、広島の2番手・中田簾が6回に連続四球でさらなる失点のきっかけをつくれば、阪神も7回から5番手で登板した藤川球児が押し出しを含む3四球と乱れ、ついに同点を許してしまう。

 さらに6番手・マテオも2回で4四球。広島も9回から登板した中崎翔太がいきなり連続四球と負の連鎖が続く。

 8対8のタイスコアで9回を終了した時点で、両チームが与えた四球は仲良く13個ずつの計26個に達した。これは戦前の1937年9月12日の金鯱vsライオンに並ぶ80年ぶりのプロ野球ワーストタイ記録だった。

 試合は延長10回、広島が安部友裕のサヨナラタイムリーで5時間24分の大乱戦に終止符を打ったが、この回、中崎が鳥谷敬に四球を与えたことから、両軍の四球の合計は27となった(四死球の合計は28)。

 やっとの思いで大乱戦を制した広島だが、このシーズン初白星が何よりの薬となり、以後、破竹の10連勝。結果的にV2への大きな足掛かりとなるのだから、野球は何が幸いするかわからない。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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札幌で起きた“世にも不思議な物語”