その後私に電話がかかってきたため、尼崎市で在宅医療を行う旧知の長尾和宏医師を紹介しました。長尾医師はすぐに往診し、心不全と判断し、すぐ関西ろうさい病院を紹介してくれたのです。祖母は適切な治療を受け、速やかに状態は改善しました。
医師が比較的多いとされる阪神間でさえ、夜間に具合が悪くなった場合、引き受けてくれる病院を探すのは容易ではありません。そして、いざという時に、かかりつけ医は機能せず、面倒をみてくれたのは、「コネ」を辿ってお願いした長尾先生だったのです。
この経験が相当堪えたのでしょう。母は、救急対応をしてくれる病院との関係を維持しようとしています。また、長尾医師のサポートに感激したのでしょう。長尾医師やそのスタッフを、近所の人たちに宣伝してまわっています。
■主治医の条件「柔軟性はあるか」
どうすれば、頼りになる、信頼できる医師に出会うことができるのでしょうか。
結論からいえば、自分で探すほかありません。
学校の同窓生や地元の地域会で探してもよいのです。医師の知り合いはいなくても、看護師など医療従事者の知り合いから情報を得て、信頼できる医師を探し、自分の主治医になってもらい、もしもの時には自分の立場にたってアドバイスをもらうことです。
主治医に求められる資質は、医学的知識の多寡や医者としての腕だけではありません。
問題が起こったとき、状況を適切に判断し、適当な専門医に紹介する対応能力です。主治医には「エージェント」としての役割が求められているのです。
この能力には個人差があります。重要な点は3つです。柔軟な思考力、コミュニケーション力、ICT機器を使いこなせることです。
ICT(Information and Communication Technology)とは情報通信技術を指し、ICT機器とはITに加え、コミュニケーション性を備えた機器のことです。具体的には、パソコンや携帯電話などが挙げられます。柔軟に考えることは、主治医として極めて重要な素養です。主治医はエージェントとして、自分の価値観を押しつけず、患者の希望に沿って対応しなければなりません。