嵐の櫻井翔さんの父親で総務省元務次官の櫻井俊氏が、2018年の元旦付で大手広告代理店「電通」の執行役員になることが決まった。総務省で電波行政トップを経験した人物の就任は関連業界への事実上の天下り。しかも社内の慣例さえ飛び越えた異例の招聘だったという。
電通によると今回の執行役員人事の狙いは、社内の労働環境改革を進めるために役員の業務分担の見直しを図るため。
それで思い出すのは、2年前の12月に新入社員だった高橋まつりさん(24=当時)が電通女子寮4階から飛び降り自殺した事件だ。
まつりさんは月百時間を超える残業を強いられ、うつ病を発症したことが自殺の原因だったとして労災が認められた。一方の電通は労働基準法違反の罪で起訴され、今年10月に有罪判決が確定している。
電通は確かに現在、年間総労働時間を1800時間に減らす働き方改革を進めている。「残業管理が厳しくなり、夜10時までに強制的に退社しなければならなくなった」(電通社員)という。
だが、そうした労働環境改革と今回の櫻井氏の招聘の間には接点が見えない。櫻井氏は、総務省時代にテレビの地デジ化を推進するなど電波や通信行政に携わってきた人物で労務畑とは無縁。それ故に今回の人事は、関連業界への天下りと見られている。