リーグ戦では第32節終了時で7位という順位が示すように、監督交代によって全てが劇的なV字回復というわけにはいかなかった。しかし、ホーム&アウェーのノックアウト方式であるACLでは、堀監督の緻密な分析と準備を大切にする側面が大きな力になった。

 浦和は決勝第1戦のアウェーゲームでサウジアラビアに遠征すると、前半は良いようにやられた。アル・ヒラルは浦和の右サイドで細かくつないで選手たちを引き寄せ、あえて逆サイドに孤立させたアタッカーに大きなサイドチェンジを送る攻撃をメインに崩しを仕掛けてきた。後半に入ると堀監督は自身が11年に指揮した際にも用いた4-1-4-1システムを放棄。4-4-2に変化して急場をしのぎ、後半無失点で1-1の引き分けを持ち帰った。

 このゲーム、左サイドバックの宇賀神友弥には「狙われた」印象が少なからずあった。しかし堀監督は、その原因をしっかりと見極めた上での対処を施した。いわく「ボールの出どころを抑える。チーム全体の戦い方の中で、ひずみが現れた場所が左サイドということ」という判断を下した。

 そして第2戦、ブラジル人DFマウリシオが出場停止から復帰する関係で、槙野智章を左サイドバックにシフトする予想が大勢を占めた。遠藤航が「堀監督も迷ったんじゃないかと思うんですよ」と話した決断は4-4-2と宇賀神の継続起用だった。そして、不動のFW興梠慎三の横には意外にも長澤和輝が並んでいた。それまでにも守備時のスライドでこうなることはあったが、「ボールの出どころを押さえる」という目的に対して、運動量と対人能力の高い長澤を相手のビルドアップ隊にぶつけた。これにより、第1戦で苦労したサイドチェンジのボールは埼玉スタジアムでは見ることもなかった。

 そして、試合の経過と共に必要なのが選手交代だ。後半29分にDFマウリシオを宇賀神に代えて投入したが、この時には当初は長澤の予定だった交代を切り替えていた。堀監督は「宇賀神が疲れたので」と理由を半分くらいしか話さなかった。

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