「一方で、仕事にやりがいを感じられない人の多くは、『自分がやりたい仕事』と『会社側がやってほしい仕事』のミスマッチに原因があると考えられます。でも実は、企業がどういう人材を求めているかも、決算書にちゃんと書いてあるんです。例えば、『今後、海外売上比率を上げていく』とIR情報に書いている会社であれば、それだけ『英語力のある人材や国際的に活躍できる人材を欲している』ということ。外部に発信していることは、内部に必ず跳ね返ってきますからね」
これは逆手に取れば、就職試験の面接で自己PRをする際にも使える。消費者目線ではなく、投資家や経営者の目線で今後の戦略を理解していれば、「そのために自分が何ができるか」より面接官の心に刺さる具体的なプレゼンテーションができるだろう。
■ブラック企業を見極めるには「利益率」に注目
また佐伯氏は、「ブラック企業」を見極める上でも、決算書の情報は有効だと話す。
「収益性の低い会社、具体的には損益計算書の『売上高総利益率』が極めて低い会社は要注意です。これは同業他社に比べて“商品の付加価値が低い”ことを表します。端的にいえば、商品に魅力がないため、営業などのマンパワーによって無理をして売らなければ会社が存続しない可能性が高い。そのためブラック化しやすいといえます」
売上高総利益率とは、「粗利率(売り上げに占める粗利の割合)」のこと。日本の場合、製造業は25%、非製造業は15%がおおよその平均値だ。ただし同じ製造業でも、薬品メーカーは70%、電気機器メーカーは30%、鉄鋼業は20%程度と、業種によって差が大きい。そのため分析する際は、同業他社と比較する必要がある。
「アップル社のiPhoneのように、独自性の高い商品であれば、他社より価格が高くても勝手に売れます。競争力のある会社とは、大抵“商品力がある会社”なのです。一方、同業他社と品質が同じか、劣っていれば、薄利多売型の戦略をとらざるを得ません。それが極まれば、人件費の抑制や長時間労働が常態化してくるでしょう。過去数年分の売り上げや利益率を分析してみて低下しているようであれば、その分従業員に対する負担は増加している可能性が高いと考えられます」
いま就活中の人はもとより、転職を考えている人、働き方の見直しを図っている人は、ぜひチェックしてみてはどうだろうか。