「家でゴロゴロしないで。掃除の邪魔!」「話すことが何もない」など、定年夫たちにむけられる妻からの苦情はすさまじい。好評発売中の週刊朝日増刊Reライフマガジン「ゆとりら秋冬号」から、定年夫に対する妻の本音と熟年夫婦がうまくいくための秘策をお届けする。
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昨年5月、埼玉県に住む花田京子さん(仮名、60歳)の夫は定年を迎えた。人付き合いが苦手な夫は「ようやく会社勤めのストレスから解放される」と喜び、数年前には早々と「今後はもう、絶対に働かない」と宣言していた。その通り、今は毎日ひたすら家にいて好きなテレビを見たり、趣味の木工をしたりしている。
そんな解放感でいっぱいの夫とは反対に、花田さんはストレスがたまって爆発寸前だ。夫が毎日家にいることがとにかく苦痛で、どう付き合ったらいいのかわからないという。
まず、会話らしい会話は皆無。2人の子どもが学校に通っていた頃は子どもたちのことを話していたが、最近は「今日、何するの?」という問い掛けに、夫から単語で答えが返ってくるだけだ。
そして、昼食問題。これまで自分の昼食は気楽にちゃっちゃっと作ってきたが、人に食べさせるとなると、そういうわけにはいかない。お昼からそんなに豪華なものも作れないから、うどん、そば、パスタのローテーション。「さすがに飽きたのでは」などと気を使い、疲れ果ててしまった。夫が働いていた頃は、週に1回友達とランチを食べに行くのが何よりの楽しみだったが、なんとなく夫に遠慮して行けなくなった。
友達の夫たちは60歳でリタイアしてしまう人はほとんどいない。「なぜうちの夫は働かないんだろう」と劣等感のようなものを抱いてしまうと花田さん。
こんな日々を過ごすなか、夫との暮らしにルールを設け、壁に貼り出した。「テレビは朝は午前10時まで」「料理は私、夕飯の食器洗いは夫」「お風呂掃除は夫」……。でも夫の食器洗いを見ていたら、洗剤をたっぷりとつけたスポンジで食器を洗った後、あまりすすがない。料理を作ってくれたこともあるが、床に落ちた野菜を洗いもせずにフライパンに入れている……。これでは任せられない。