独立リーグに所属する野手でも、伊藤と同じ高校卒1年目の山本祐大(捕手・19歳・178㎝・78㎏・右投右打・BCL滋賀)と和田康士朗(外野手・18歳・184㎝・68㎏・左投左打・BCL富山)の2人が面白い。山本は京都翔英高で3年春の近畿大会、夏の甲子園にも出場しているが、石原彪(楽天)がいたため当時のポジションはセンターだった。滋賀に入団後、捕手に専念し、才能が開花した。持ち味はその強肩。10月5日に行われたオリックスとの交流戦では、一軍でもレギュラー格の西野真弘の盗塁を阻止している。その時の送球タイムは1.96秒をマーク。通常2.0秒を切ると、アマチュアでは強肩と言われるが、実戦でこれだけのタイムを出せる選手はそうはいない。打撃も、力強さは物足りないが、リーグ戦では3割近い打率を残している。
一方、和田は、高校で陸上部に所属していたが、途中で退部して2年からクラブチームでプレーしていたという“変わり種”だ。陸上部出身ということもあり、抜群の脚力を誇るが、それ以上に目立つのはフルスイングだ。体がねじ切れるくらいに振るそのスタイルは、柳田悠岐(ソフトバンク)を彷彿とさせる。まだまだ細いため長打は多くないが、体が大きくなれば見違えるような打球を放つ可能性は高いだろう。
高校生、大学生はプロ志望届の提出が義務付けられているため、驚くような指名は減ったが、そんな中でも全国的には知られていない選手を紹介したい。
高校生は関洸司朗(外野手・181㎝・78㎏・右投右打・飯山)と荒井颯太(外野手・190㎝・90㎏・右投右打・関根学園)の二人だ。関の魅力は高い運動能力。特にストライドが広く、ぐんぐん加速するようなベースランニングは迫力十分だ。打撃の対応力はまだまだだが、リストの強さと守備範囲の広さも持ち味だ。荒井は高校生離れした体格を誇るパワーヒッター。まだ手打ちが多いが、全身を使えるようになれば、その体格がさらに生きてくるだろう。ともに支配下での指名は難しいレベルだが、右打ちの外野手は希少なだけに、育成選手でも育ててみたくなる素材だ。
大学生では、鎌田光津希(投手・178㎝・80㎏・右投右打・敬愛大)が面白い。がっちりした体格から投げ込む140キロ台後半のストレートは数字に見合う威力があり、フォームに悪いクセがないのもいい。今年はもうひとつ調子が上がらなかったが、昨年まではエースとしてフル回転しており、試合を作る能力もある。もう少し下半身の使い方に粘りが出てくれば、さらに馬力が生きてくるだろう。
ドラフト会議で指名された時点で大きな注目を浴びるのは上位指名の選手達であるが、プロ入り後に立場が逆転することは決して珍しくない。今年は独立リーグを中心に異色の経歴を持つ選手も多いだけに、彼らのような下位指名候補にもぜひ注目してもらいたい。(文・西尾典文)