地方自治体を含めた官僚出身の立候補者は約90人だから、医師の立候補がいかに多いかがわかる。
このような流れは最近はじまったものだ。その証左に、当選5回以上の「大物」議員は鴨下一郎氏(自民・東京13区)、阿部知子氏(立憲民主・神奈川12区)しかいない。現職13人のうち、9人は当選2回以下だ。
では、どのような医師が政治を志すようになっているのか。
医師の立候補者の平均年齢は51.7歳。年齢は立候補者全体の平均52.8歳と変わらない。立候補者のうち、60歳以上は9人しかいない。
医師で52歳といえば、中間管理職やクリニックの開業経験者はいるが、病院グループのオーナーや大病院の院長経験者はいない。
仙谷由人・元官房長官をして「あいつが生きていたら民主党は違った形になっていた」と言わしめる故今井澄氏は、東大紛争の安田講堂攻防戦での現場責任者だった。40歳で諏訪中央病院の院長に就任後、52歳で社会党から参議院議員に当選した。2002年、62歳で胃がんにより亡くなる。彼の生き様が、そのスケールを示している。
知人の厚労官僚は「官僚出身の大物議員は激減した。官僚出身の議員は、細かい法改正は得意だが、大きな政策転換を主導するのは、たたき上げの議員だけだ」という。
近年、事務次官経験者の多くは、国会議員に転職しなくなった。官僚出身の議員の多くは、課長補佐など若い頃に立候補するため、組織の中間管理職の経験しかない。
彼らはシステムをつくり、組織を動かすことで社会を変えようとする。日本の社会を変革するために、与党の一員となり、霞ケ関をリードしようとするのは、彼らなりに合理的だ。ただ、グローバル化した世界で、この手法には限界がある。日本国内でいくら議論しても、世界の流れに乗らなければ置いていかれるだけだ。
私は、医師の立候補者と官僚のメンタリティーは似ていると思う。私には、組織を利用して、「上から改革」しようとしているように映る。