今回の衆院選に出馬した医師は41人。上昌広氏は「組織を利用して、『上から改革』しようとしているように映る」と指摘する (※写真はイメージ)
今回の衆院選に出馬した医師は41人。上昌広氏は「組織を利用して、『上から改革』しようとしているように映る」と指摘する (※写真はイメージ)
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 小選挙区・比例区を合わせて1100人以上の立候補の届け出があった衆院選。なかでも目立つのは、医師資格を持つ候補者の数だ。『病院は東京から破綻する』などの著書を持つ、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、増える「医師の立候補」とそのメンタリティーについて言及する。

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「現代の政治家の仕事は不幸の再配分だ」

 と、鈴木寛・元文部科学副大臣は語る。鈴木氏と私は14年前から「現場からの医療改革」をモットーに活動してきた同志だ。私も鈴木氏の発言に賛同する。

 誰もがやるべきと考えている課題があり、それを国が放置していれば、それは政治家の怠慢だ。ところが、現在、そんな課題はない。残された課題は、誰かが希望すれば、誰かが反対するようなものばかりだ。

 多くの国民は社会保障の充実を希望するが、同時に負担増を嫌う。いかにして負担を分け合うか、それを国民に納得させるかが、現代の政治家への課題だ。そして問題は、どのようにして合意を形成するかだ。

 国民の多くが無党派だ。選挙の成否は、彼らからいかに支持を取り付けるかにかかっている。そこで重要なのは、誰が言うかだ。知名度が高く、国民が共感できる人が言えば、社会は一気に動くことがある。小泉純一郎・元首相や小池百合子・東京都知事などは、その代表だろう。

 国民が共感するという点で、医師にはアドバンテージがあると考えている。

 国家が制度疲労したとき、社会的矛盾は辺境に蓄積する。その矛盾と医師は対峙する。問題意識を抱き、活動する。そして国民が支持する。医師である孫文やチェ・ゲバラが革命家に成長したのは、このような背景があるのだろう。

 日本医事新報社の調査によれば、今回の衆院選では41人の医師資格保持者が立候補した。現職13人、元職6人、新人22人。選挙区29人、比例区12人だ。政党は希望17人、自民12人、維新4人、立憲民主3人、共産1人、無所属4人だ。

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