一方、野手陣ではスラッガータイプが補強ポイントだろう。

 清宮の指名に走りたいのはそうした事情からだろうが、東京六大学リーグで5試合連続本塁打をマークした岩見雅紀(慶応大)はスカウトの評価を急上昇させているスラッガーだ。

 ここは清宮の指名を回避して投手を1位指名した上で、岩見に切り替えるというのもひとつの手だ。岩見はスラッガータイプにありがちなプルヒッターではなく、ライトスタンドへも運べる。大学の先輩・横尾俊建(日本ハム)が今季台頭しているのも、彼の評価につながるはずだ。

 もっとも、野手は岩見と数人くらいに抑え、中位から下位にかけては投手指名を多くしたい。

 先にも書いたように、けが人続出で長くチームのローテーションを担った選手がいない。投手陣に厚みを加える意味では、昨年の楽天が採ったように8人の投手を指名するくらい極端に投手にこだわってもいい。東京ガスの石田光宏など先発・中継ぎのどちらにも対応できる使い勝手のいい投手は指名したいし、大学生では近藤弘樹(岡山商科大)などもいる。

 今季、けが人が続出したことがチームの低迷につながった。同情の余地はあるが、近年のこの連鎖はアマチュア球界も気になっているところだろう。スカウト網を全国に張り巡らしてスカウティング活動を熱心にすることは大事なことだだが、それ以上に、けが人を増やさない対策も施していかなければ、今後、入団拒否をする選手が出る遠因にもなるはずだ。

 2015年のリーグ制覇が遠い昔のように感じられるくらい、この2年での失墜ぶりで信用性を失っている。チームとしてどう打開していくことができるか、チームが抱える難題は決して少なくない。(文・氏原英明)

ヤクルトが狙うべき選手の優先順位>

鈴木博志(ヤマハ)
田嶋大樹(JR東日本)
岩見雅紀(慶応大)

●プロフィール
氏原英明
1977年、サンパウロ生まれ奈良育ち。地方新聞社勤務を経て、03年からフリーライター。夏の甲子園は03年から大会をすべて観戦取材するなど、アマチュア野球に精通。現在のプロ野球選手のアマチュア時代を知る強さを生かし、プロの現場でも成長ぶりを追いかける。一方、最近では個性がどう生かされているかをプロアマを問わず観戦の主眼に置いている。

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