加齢とともに低下する聴力。「みんなそうだから」「仕方ない」とあきらめてしまう人も多い。でも、聞こえの悪さが認知症につながるとしたら……。それでも「年のせいだから」と放っておきますか? 週刊朝日MOOK「家族で読む予防と備え すべてがわかる認知症2017」では、聞こえと認知機能の関係を医師に尋ねた。
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聴力の衰えと認知機能の低下の関係については研究が進んでおり、厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)でも、難聴は認知症のリスク因子のひとつとされています。
聴力は、年齢とともに低下していきます。低下の仕方や聞こえの程度には個人差が大きいとされていますが、一般的に、老化が始まるといわれる30代からゆっくり進み、65歳を過ぎると難聴の有病率は急激に増加します。65歳以上では約45%、80歳以上では80%の人が難聴といわれており、慶応義塾大学医学部教授の小川郁医師は、「現在、国内には介入が必要な難聴者が約900万人いると考えられる」といいます。
聞こえの低下が認知機能の低下につながる原因として、小川医師は次のように話します。
「人にとっては、聴覚情報のなかでもとくに言語情報が多く、言葉が耳から入ると、頭の中では常に『思考』と『情動』による反応が起こります。単に音としての刺激だけでなく、入ってきた言葉、情報に対して、どう応答するか考えたり、その言葉によって喜んだり悲しんだり怒ったりし、そうやって脳が働くことで認知機能が維持されているのです」
聞こえが悪くなり、外からの情報が入らないと、考えたり感じたりすることが減ります。また、他者とのコミュニケーションや活動が減ることにもつながります。
「例えば誰かが話しかけたときに、聞こえずに返答しないと、話しかけた人は『無視された』と感じて気分を害するかもしれません。そういうことが続くと、社会や家族の中で孤立し、会話をしない、外出しないなど、コミュニケーションや活動が減っていきます。それにより、認知機能の低下につながることも考えられます。脳の機能は使うほど活性化し、使わなければ衰えていくのです」(小川医師)