私は以前ドイツに長く住んでいたが、当時のニュースなどで詳しい北朝鮮情勢を見聞きした記憶は数えるほど。得体の知れない怖さがあっても不思議ではない。
平昌で現地取材もしている前述の記者は、「五輪組織委員会の人が『ピョンヤン(平壌)じゃなくてピョンチャンですよ。間違えないでください』と言ったという笑い話があるんですよ。冗談交じりでしょうが、それが象徴していますよね」と話す。日本では考えられないが、多くの国では“あるある”かもしれない。
万が一、本当に不参加の国が出た場合に心配なのは五輪の価値が下がってしまうこと。オーストリアは世界最強のスキー王国。そしてドイツは自他ともに認めるスポーツ大国だ。
前出の記者はこう指摘する。「北米アイスホッケーリーグは、リーグ戦を優先するために五輪には出ないと発表した。カナダやスウェーデンなどではアイスホッケーは人気が高く目玉競技の一つ。トッププロが参加しないのは痛手。韓国は雪上競技が全体的に弱く、盛り上がっていないところにさらに拍車がかかる可能性もある」
日本にとって、ノルディックスキーのジャンプと複合はメダルの期待大の種目。
高梨沙羅と伊藤有希の2枚看板を擁するジャンプ女子では、五輪や世界選手権の大舞台になると金メダルをかっさらっていくドイツ選手が最大の難敵。レジェンド葛西紀明が45歳で悲願の金メダルに挑むジャンプ男子では、昨季ワールドカップ(W杯)個人総合王者のオーストリア選手が優勝候補の一角だ。
そして、エース渡部暁斗が日本勢初の個人金メダルを狙う複合は、昨季W杯総合上位5人のうち3位の渡部を除く4人がドイツ選手という“ワタベvsジャーマン”の構図が出来上がっている。
またフィギュアスケート男子シングルでは66年ぶりの金メダル連覇を羽生結弦が狙う。
飛車角落ちは大げさにしても、トップ選手不在ではメダルの輝きもどこか色あせてしまうかもしれない。そうならないことを祈るばかりだ。(ライター・小林幸帆)