8月31日に行われるオーストラリア戦は勝てばワールドカップ出場が決まるが、もし勝利を逃せば5日(以下、現地時間)に行われるサウジアラビアでの“完全アウェー”の最終戦に突破がかかる状況になる。だが、運命の2試合を前にして代表候補の選手にけが人が続出しており、短い休暇を終えて来日したハリルホジッチ監督も頭を悩ませている様子だ。
特に痛いのがケルン(ドイツ)に所属する大迫勇也の負傷だ。7月31日のボローニャ(イタリア)との親善試合で右足首を痛めた大迫は靭帯損傷と診断された。20日のブンデスリーガ開幕戦に間に合うかは微妙な状況で、順調に回復したとしても本人とコンタクトを取りながら、ギリギリまで代表合流の可否を見極めることになるだろう。
仮に大迫がオーストラリア戦に出られない場合、前線のチョイスはかなり難しいものになる。昨年11月に代表へ復帰して以降、大迫は6試合で3得点。その数字もさることながら、前線でボールをおさめ、2列目やサイドの選手に前を向かせ、そこからゴール前に入っていくプレーの質と安定感は日本人選手で他の追随を許さないものがある。
縦に素早くボールを付け、相手の裏を狙う現代表のスタイルにおいて、大迫のポストプレーは攻撃の生命線とも言える。また相手に多少引かれた場合でも大迫が深い位置で絡むことにより、ボールを失うことなく崩しの起点を作ることができるのだ。
象徴的な試合が大迫の復帰2試合目となったホームのサウジアラビア戦。自身のゴールこそ無かったが、4−2−3−1の1トップで柔軟かつ力強くボールをおさめ、久保裕也、清武弘嗣、原口元気らの前向きな仕掛けを引き出した。日本のシュート数は16本で相手は5本。2-0から終盤の猛攻に耐え切れず1点差とされたが、戦術面の機能性という意味では“ハリルジャパン”のベストゲームだろう。その立役者は大迫だった。
1年5カ月ぶりの選出から半年にして日本代表の主力に定着した大迫。しかし見方を変えれば、それまでは大迫無しで戦っていたわけだ。