親に連絡すると生徒の信頼感を失うと考えたのだろうか。孤立しがちだからといって一緒に下校するのが親身な教師のやることだろうか。それしか思いつかなかった、ひとりでは荷が重かったというのなら、経験豊富なベテラン教師に相談してみる方法もあっただろう。

 なんだか妙な話だな……と思っていたら、こんな発言が飛び出した。

「私は徐々に、教員と生徒の関係ではなく、(被害者を)ひとりの女性として見るようになってしまいました。時期ですか、4月中旬から下旬にかけてです」

 徐々にどころではない。相談を受けてから1カ月かそこらで、被告人は恋に落ちたらしいのだ。その気持ちを隠さず、4月末には告白までしている。

「ひとりの男性とひとりの女性として、対等な立場で支えていきたいと言いました」

 びっくりだ。子どもに手を出すなんてあり得ないと言っていたという妻の証言から、ふたりの恋愛関係は生徒が積極的にアプローチして生じたのだと考えていたのだ。

 生徒は「うれしい」と答えたという。地味で友人も少なく、家庭にも居場所のない高2女子が、頼りにしている担任教師に告白されたら舞い上がるに決まっている。本気にするさ。気分はマンガかドラマの主人公だよ。相手に与える影響まで考えての告白だったとはとうてい思えない。

「その後、5月2日にキスをしました。驚いた様子でしたが、うれしいと言ってくれました」

 軽い、軽すぎる。なぜ先を急ぐのだ。やることに迷いがなさすぎて、背徳感ってものが微塵も感じられないね。

 人を好きになる気持ちは止められない。世の中には担任した生徒との恋愛を実らせて結婚する教師もいるのだし、人の恋路をとがめる気持ちはない。しかし被告人は既婚者。冷たい夫婦関係だったと妻は証言したが、離婚してもかまわない、というほどの覚悟が被告人にあったわけでもなさそうだ。

「自分は妻にひどいことをしていたと思いますが、当時は(被害者の)そばにいたい気持ちを優先してしまいました」

 ようするに、何も考えていなかったのである。どころか、自分に酔っていたフシさえある。被告人は当時をこう語るのだ。

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