自分とつきあい出してから生徒は明るく元気になった。男子生徒とも喋り、学校行事に積極的に参加。コミュニケーションが取れなかった親とも直接話ができるまでに変化した――。
<熱血指導>に効果あり。モラルに反していることを意に介さず、意気揚々と過ごしている姿が目に浮かぶようだ。
加速度的にメールのやり取りはひんぱんになり、会う回数も増えていく。
「何度も大好きと言われ、下の名前で呼んでくれるようになりました。生徒のほうからキスしてきたり、彼氏と彼女の関係で接してくれました」
そして6月後半、被告人は満を持して生徒をデートに誘う。告白、キス、数え切れないメールのやり取り。交際開始から約2カ月、ヒートアップしたふたりの思いは一致していた。待ち合わせ後、池袋のホテルに直行したのだ。被告人はスタバで会って原宿に行く予定だったと言い訳したが、弁護人が真意をただすと、本音をさらした。
「私自身(セックスを)したかった」
だろうな。告白から一週間かそこらでキスまでする教師である。生徒からキスしてくるようになったと喜んでしまう男が2カ月後にどう仕上がるか。ブレーキの効かない暴走列車と化すだろう。
恋の炎を燃やしながらも、家庭では何食わぬ顔で過ごしていた被告人に、妻と離婚してでも教え子との恋愛関係を続ける意志があったかどうかは定かでない。そのつもりだったとしても相手は現役の高校生だ。スキャンダル回避のため卒業するまでは隠すしかなかったか。
では、妻に内緒で話を進め、合意の上で性的関係を結んだはずの被告人は、なぜ逮捕されたのか。誤算があった。どうやら生徒は親に、担任教師とつきあっていること、デートすることを喋ってしまったらしく、制止を振り切って池袋へきてしまったのだ。
生徒はそのことを被告人に知らせなかったのだろう。聞いた上で性交までしたとなればそれこそ常軌を逸している。なぜ警察がホテルの前で待っていたのか詳細は不明だが、激怒した親が警察に連絡し、なんらかの方法で居場所が突き止められ、御用。燃え上がった恋の結末はあっけないものだった。自分のした行為が児童福祉法違反にあたるとわかっていたのか、恋愛の自由を主張することさえしなかった模様だ。