赤が映えるように、目元にはキリッと黒のアイラインを入れました。ただし、アイシャドーは陰影をつける程度。ファンデーションでツヤを出し、眉はチャコールグレーで太めに。ここまで仕上げても、もともと麗華さんが持っている雰囲気があるので、キツくなりすぎることはありません。優しさの中に意思のある、まさに菅野美穂さん、優香さんに共通する大人の意思を持った女性像に近づけていきます。
■本命の服を選ぶための、しぎはら流レッスン
私は、麗華さんにとにかく自分の意思を持ってほしいと思いました。そこで、テストする意味でも、あえて三つのカテゴリーでお洋服を用意してみたのです。
Aタイプ:今までの麗華さんが好みそうな、フリフリ、ふわふわ感満載のガーリー服
Bタイプ:いかにも“デキる女!”という感じのキャリア服
Cタイプ:大人っぽい華やかさが漂うクラシックなエレガント服
それぞれのカテゴリーで何着ずつかワンピースをセレクトしてお伝えしたところ、麗華さんはAタイプから2着、Bタイプから1着を選びました。
「なるほど、この3着ね。じゃあ早速着てみてもらえるかしら?」
私がこう言うと、麗華さんは試着室に入って着替えました。3分後、カーテンからちょっと顔を出した麗華さんは、どこか浮かない様子でした。
「しぎはらさん、あの~」
そう言うと麗華さんは、少々困った様子で続けました。
「私、こういうタイプ(Aタイプ)の服ってまさに自分好みで、それをしぎはらさんがあえて選んでくださったことがなんか嬉しくて、これもいいってことかなって、直感的にパッと手にとってしまったんですけど、なんかいつもと違うんです」
麗華さんは、違和感に気づいたようでした。それもそのはず、メイクと服がチグハグだからです。キリリとした目元と赤い口紅に、パステルカラーのガーリー服はやっぱりしっくりきません。麗華さんはAタイプの2着目の試着を諦め、Bタイプを着て出てきました。それはキリッとハリ感のあるスキのないシャツワンピースに、比較的高いヒールのポインテッドトゥパンプスでした。
「うわっ、なんかすごい強そうな……。でも、これって私が着て大丈夫なんでしょうか? やっぱり違う気がするんですけど」
これまた違和感を隠せない麗華さん。どうしても“着られている”感が否めません。なぜこの服を選んだのかを聞いたところ、
「Aタイプの服だと今までの自分と同じになってしまうから、あえてチャレンジしたほうがいいのかなと思った」
のだそう。つまり変わりたい願望をそこに込めてくれたのですが、チョイスが間違っていたということです。麗華さんの魅力とメイク、そして服のテイストがどうしても溶け合わない、これではいくら“変わった”としても意味がありません。
■「ゆるぎない美しさ=強さ」を表現するクラシカルな服
空回りした麗華さんでしたが、実のところ答えはCタイプ。AとBを着てみて「これじゃない」と感じた彼女は、最後にCタイプの服を着たいと、自ら申し出てくれました。
私がご用意したのは、「LAUREN RALPH LAUREN」のタイトフィットワンピース。襟元から脇、そして裾とスリット部分に白のパイピング切り替えを施してあり、コントラストがはっきりしているのでシンプルながら潔さを感じさせてくれます。これぞ、まっすぐと自分の進むべき道を知っている女性こそが着こなせる一着です。サイドのスリットも自らの女性らしさを誇る自信につながるデザインです。スリットのあるスカートは男性の目を引く効果がありますが、媚びて使うと下品になるもの。自分に自信を持った女性だけが着こなせる高貴なデザインとも言えるでしょう。この服に、自らの意思で男性を選ぶ女性になってほしいという思いを込めました。