今回の人事では、他の役職はどうでもよい。ただ、政調会長に山尾氏が任命され、上述の「改革ハト派」新勢力結集に挑戦することだけを期待したい。
山尾氏は、2014年の民主党(当時)に大逆風の中で行われた衆議院選挙で、地元の電力会社である中部電力労組の支援を蹴って、反原発を唱えた。その時のブログには、こんな心情を綴っている。
「私は、中電労組と原発推進協定を結んでいません。ですから、協定を前提とした推薦も受けていません。原発政策について考え方が違うので、致し方ないことだと思います。推薦のために、私の『原発ゼロ社会をつくる』という信念を変えることはできません」
こうした信念を貫く姿勢が有権者の心を打ち、民主党の中では数少ない選挙区当選組になった。選挙戦のさなか、態度を明確にするのは、極めて勇気のいることだ。このような覚悟をもった政治家が、民進党には非常に少ない。
山尾氏は、国会でも、舌鋒鋭く、しかも極めて冷静かつ論理的に政府を追及してきた。その姿には、カリスマ性のポテンシャルを感じさせる。
少し褒め過ぎと言われそうだが、いずれにしても、それ以上の候補が見つからないのは事実だ。
このシナリオが現実のものになれば、これまで政治から少し距離を置いてきた多くの有識者と呼ばれる議員予備軍も、次の選挙戦に参加する可能性が高い。現に、私の知り合いの中にそうした話をする人が増えてきている。
私自身、この話を山尾氏にぶつけたわけではない。つまり、全くの妄想と言われても仕方がない。
しかし、これくらいのことが起きなければ、うまく行って安倍政権が倒れても、その代わりに岸田文雄政権が誕生して終わりというのが、悲しいかな、今の政治情勢である。
いろいろ取り沙汰される使い古しの政治家たちによる新政権構想などより、はるかに議論に値する話ではないだろうか。(文/古賀茂明)