6月22日、乳がんのため亡くなった小林麻央さん。彼女が最後の時間として選んだのが、家族とともに過ごすことができる在宅での医療だった。超高齢化社会を迎え、「自宅で最後を迎えたい」と望む人が国民の6割とも言われるなか、在宅医療についての過った認識も広がっている。週刊朝日ムック「自宅で看取るいいお医者さん」より、思い込みにとらわれない、在宅医療の正しい知識を覚えておきたい。
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【誤解その1】在宅医療では、高度な検査や治療は受けられない?
「在宅医療は看取りの医療なので、高度な検査や治療は受けられない」と思っている人は多いようです。在宅医療を受けているのは、子どもから高齢者まで、病気の対象も認知症から末期のがんまでさまざまです。自宅では手術はできませんが、在宅酸素療法や人工呼吸、経管栄養をはじめ、医師によっては、緩和ケア療法や腹膜透析、在宅輸血療法もおこなっています。在宅医療は、「看取り」に至るまでの長い期間、病気を抱えた人たちの家庭生活を支えるための医療なのです。
医療機器の小型化に伴い、これまで病院でしかできなかった検査も、できるようになってきました。X線検査やCT(コンピューター断層撮影)、胃カメラのような大がかりな検査機器は持ち込めませんが、血液検査、尿検査などに加え、心電図検査やスキャナーによる超音波検査などをおこなう医師も増えてきました。できない検査や治療については、提携医療機関につなぎます。
【誤解その2】在宅医療はお金がかかる?
「在宅医療は高い」と思っている人も多いと思います。在宅医療では「診療費」のほか、24時間対応のための「在宅総合診療料」などが入るため、外来に通院するよりは費用がかかります。しかし、自宅で受ける医療にも、病院と同じように「健康保険」が適用されますし、自己負担が一定額以上になったときには「高額療養費制度」で払い戻しが受けられます。70歳以上の一般所得者の自己負担限度額は1万2千円です。
月2回の訪問診療でかかる費用は「薬代」や「検査料」を除いて1割負担で6千円程度。がんの緩和ケアなど特殊な治療が必要な人は、それなりに高額になりますが、月額1万円以下の人が大半です。
外来への通院も、タクシーを使えば高くなりますし、夜間や深夜の対応が困難な医療機関もあります。本人の通院ストレスなども考えながら、選択するといいでしょう。