(3)衝動コントロールができない
豊田氏は、怒りと攻撃衝動をコントロールできず、暴力まで振るったようだ。このように衝動コントロールができず感情的になるのも、「傲慢症候群」の特徴である。その一因として、(1)の「強い特権意識」ゆえに、自分は少々感情的になっても許されるという思い込みと、(2)の「想像力と共感の欠如」により、自分が感情的になって吐く言葉が相手をどれだけ傷つけるかに思いが及ばないことがあると考えられる。
■「間欠爆発症」の可能性も
豊田氏は、12年12月に初当選した衆院選挙の期間中から暴言がひどく、何度も「ぶち切れていた」らしく、5年近くで計100人の秘書が辞めたという報道もある。したがって、精神科医としては「間欠爆発症」の可能性も疑わざるをえない。
「間欠爆発症」は、攻撃衝動を制御できない衝動制御障害の一種であり、激しい口論や喧嘩、他人への暴力や器物の破壊などを繰り返す。しかも、攻撃性の爆発は、きっかけとなるストレスや心理社会的誘因と釣り合わないほど激しい。おまけに、衝動的で計画性がない。
「これくらいのことであんなに怒るなんて信じられない」と周囲から言われる人はどこにでもいて、「かんしゃく持ち」などと陰口を叩かれる。おそらく、豊田氏もそう言われてきたのだろうと推測されるが、これだけ暴言を繰り返し、秘書に暴行まで加えたのだとしたら、単なる「かんしゃく持ち」では片づけられないのではないかと危惧せずにはいられない。
「傲慢症候群」にせよ、「間欠爆発症」にせよ、周囲から許容されると、拍車がかかる。豊田氏も、これまで許容されてきたからこそ、あれほど暴走したのではないか。
そこで思い出されるのが、自民党の河村建夫元官房長官が発した、「あんな男の代議士なんかいっぱいいる。あんなもんじゃすまない」という言葉だ。これは、思わず出た本音だろう。実際に「あんな男の代議士なんかいっぱいいる」からこそ、豊田氏は「あれくらいやっても許される」と思い込んだ可能性が高い。
だとすれば、「傲慢症候群」の寄せ集めである自民党の代議士集団こそ、今回の騒動の元凶といえよう。自戒を促す次第である。(寄稿・片田珠美)