諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した
諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した
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 児童養護施設で学習支援をしていた時、施設出身者向けの奨学金の申請書を見た元SEALDsの諏訪原健さんは、違和感を覚えたという。
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 児童養護施設での学習支援ボランティアをしていた中で、どうしようもなく怒りを覚えた出来事について話そうと思う。当時の私は高校3年生の生徒の担当についていた。高3というと、進路はもちろんだが、金銭的な面も含めて、施設を出てからのことを考えなければならない学年である。

 ある日の学習の時間、職員の方から「奨学金の申請書を作る手伝いをしてもらえませんか」と言われ、担当の生徒と一緒に申請書に書く文章の推敲をすることになった。

 児童養護施設出身者に対しては、財団やNPOなど、民間による奨学金も様々な形で用意されている。いろいろな団体が支援を行なっているので、当然のことながら、申請書で問われている内容にも違いが見られる。

 どんなものがあるのかと、複数の奨学金の募集要項を眺めていた時、ある団体の申請書の内容に目を疑った。そこには「あなたの進学を社会が支えてくれることをどう思うか」とか、「支援をしてくれる人々に対してどう思うか」とか、そんな質問が並んでいた。

 その団体の担当者は、「私の進学を支えてくれるような社会だからこそ、自分の夢を実現できる」とか、「支援者のみなさんのおかげで、進学できることに感謝している」とか、そういう言葉を書かせることが、奨学生を選ぶ上で必要だと思ったのだろうか。私からすれば、質問の意図がよくわからない。

 担当している生徒の前では、「テキトーに、こういう支援があって良かった、頑張りたい、みたいなことを書けばいいよ」なんて言いながら、何事もないように振る舞っていた。しかし心の内では、何でこんなことを書かせなければならないのだと、腹が立って仕方なかった。

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