「話すと長くなるんですけど、そこは少し自分のこのミランの3年半を経て、ミランに移籍する前と今、移籍を選ぼうとしてる、その考え方は当然変わってきてます。なので、そのあたりは一言で言うと、あんまり格にはこだわってないなっていうのが、たぶん今の自分の移籍選びでは刺激っていう点では、格は最優先事項ではない」

 それは例えば、ミランより大きなクラブに移籍するといった坂道を昇って行くようなチャレンジとは必ずしも合致しないということだ。日本人選手があまりおらず、成功例が少ない環境は選択肢の1つだろうし、あるいはミランとも全く異なる環境のクラブでキャプテンやピッチの監督的な存在を目指すといったこともそうだ。もちろん、こだわらないのはクラブの“格”であって、チームとしてタイトル、あるいは上位を狙っていくスタンスは本田もチームメートと共有するものだろう。

 また本田は「試合に出ることを優先して移籍をしたってことが過去にない」と語り、“W杯イヤー”だからといって出場機会を優先して、開幕前からレギュラーが約束されるクラブにこだわる気はないようだ。もちろん競争の中でポジションを勝ち取っていく意識はあるし、その結果としてW杯に向けていい状態を作っていければいいが、そこにとらわれて本田にとって刺激のない選択をする考えではないということだ。

「自分が面白い、自分が成長できる、刺激的なところに常に挑戦心を持っていっている」

 “オープンマインド”という言葉を用いている通り、これから来るオファーをリーグに限らず検討するだろうし、現段階ではMLSや中国の可能性も消せない。だが、本田のプライオリティーは欧州の中で刺激的なリーグ、そしてクラブにあるのではないか。欧州主要リーグで日本人の成功例が少ないところ、そして“格”としてビッグクラブである必要はないが、野心を持ってチャレンジしていけるクラブ。その基準で考えれば、おのずと絞れてくる。

 スペインかイングランドの中堅クラブ、ただしがんばり次第では上位を狙える位置づけのクラブというのが「ミランに移籍する前と今、移籍を選ぼうとしてる、その考え方は当然変わってきています」という本田の構想するクラブではないだろうか。(文・河治良幸)