
今シーズンのリーガエスパニョーラ、乾貴士(エイバル)は最終節バルセロナ戦で、2得点を挙げる快挙を遂げた。日本人選手として初めてバルセロナの本拠地「カンプ・ノウ」でゴールを記録し、有終の美を飾っている。その効果もあってか、5月25日に発表された日本代表メンバーにも復帰を果たしている。
「シーズンを通してレギュラーとして戦う」
その点でも、リーガ史上初の日本人となった。28試合出場(26試合先発)。これは中村俊輔や大久保嘉人もなし得なかった偉業である。
乾は昨シーズンも27試合に出場しているが、先発は18試合だった。レアル・マドリー、バルセロナ、アトレティコ・マドリーのような強豪相手では、必ず先発を外れた。準レギュラーにすぎなかった。
では、今シーズンはなぜ左サイドアタッカーの定位置を取れたのか?
「乾は守備の強度やタイミングは課題だが、ボールを持ったら勝負できる」
エイバルを率いるメンディリバル監督は語っていたが、"前半部分の問題が解消できた"ということなのだろう。
エイバルの戦術では、サイドの選手は仕掛け、崩しと守備のプレッシングと封鎖する役割を同時に担っている。昨シーズンまでの乾はドリブルの脅威は与えていたが、一人だけプレスに行って裏をとられたり、リトリートが遅れてピンチを招いたり、一対一での強度そのものが低く、振り切られる場面があった。しかし今シーズンは戦いを重ねる中、守備のタイミングをつかみ、勝てないまでも負けない一対一を身につけた。
弱点を消したことで、長所である突破が際立つことになった。アトレティコ戦では度肝を抜くスキルを見せた。ドリブルプレーは華々しく、地元ではとくに子供からの人気が高い。
もっとも、現状に満足すべきではないだろう。乾の得点はわずか3。アタッカーとしては寂しい数字である。リーガは競争が激しいだけに、もし来季も同じなら――。ポジションは盤石ではない。