「専用のカードがあれば、もっと気軽に遊べるし、より多くの人にひらがなポーカーの面白さを伝えられるんじゃないか」。カードの製品化を考え始めた吉本さん。ネット上で事業資金を募るクラウドファンディングに目を付けた。

 16年9月から、1セット3000円(先行限定、通常価格は送料込で3500円)からで資金を募ったところ、約1カ月間で432人から約155万円が集まった。終了後も、購入を望む声が上がったため、17年2月から第2弾をスタート。約1カ月半で434人から約170万円が寄せられた。

 製品化されたカードは、1セット70枚。ひらがな50音と、ひらがなと組み合わせて使う濁点2枚、半濁点1枚の透明カードをそろえた。想像力をかき立てるアイテムとして、文字の代わりに使えるワイルドカード「◯」や、ネット時代ならではの草カード「w」も盛り込んだ。また、50音のうち、使用頻度が高い上位10文字「い、ん、か、し、う、た、と、つ、て、の」は各2枚とした。

 購入者の評判は上々で、「実際に遊んでみるとすごく面白い」「大人にはない子どもの発想に感心した」などの反響があった。吉本さんによると、子どもにひらがなを教えるために使うケースや、意外なところでは、日本語教師が日本語を学ぶ外国人への教材に利用するケースもあったという。

 吉本さんは「ひらがなポーカーの魅力は、老若男女関係なく遊べて、相手によって作る言葉が変わってくるところ」「負けても悔しくないところ」と言う。「スマホ全盛の現代だからこそ、仲間と集まって顔を合わせ、同じ時を笑いあって過ごす、というアナログゲームの温かさにも引かれる」。

 自身が完成させた言葉でお気に入りなのは、「ちら わおー」だ。「想像力をかき立てられるので。でも、シエさんの『やくみつる』の衝撃に勝るものはまだ出せていません……」(吉本さん)

 さらに、発展的な遊び方として「テーマ(お題)を決めて単語を作る」「相手が出した5文字の言葉を入れ替えて別の言葉を作る」などがある。購入者からは、カードの山をめくって出てきたひらがなで始まるものを探して持ってくる、すべてのカードを参加者で振り分け、手持ちのカードを使いきるまでしりとりする、といったさまざまなアイデアも寄せられているという。

 ブームのきっかけを作ったシエさんは取材に対し、こんなメッセージを寄せてくれた。

「いつものツイートのつもりだったのにこれほど反響をいただき、またたくさんの方が楽しんでくださっているということで、いまだにうれしさよりも驚きの方が大きい状況ですね。家の裏にやたら生えてるキノコが市場でめちゃくちゃ高値で売れたみたいな感じです」

 吉本さんは、まだまだ購入を望む声が多いため、廉価版の製品を生産しようと、幾つかのメーカーと協議中だという。シンプルゆえに面白く、日本語の奥の深さも感じさせてくれるひらがなポーカー。今日もどこかで、衝撃(笑撃?) の5文字が生まれているかもしれない。(ライター・南文枝)