早稲田実-日大三にて九回の裏に同点本塁打を放つ清宮幸太郎選手 (c)朝日新聞社
早稲田実-日大三にて九回の裏に同点本塁打を放つ清宮幸太郎選手 (c)朝日新聞社

 18対17。

 高校野球春季東京都大会の決勝はまるでラグビーのようなスコアで早稲田実が日大三を下し、荒木大輔を擁した82年以来実に35年ぶりとなる優勝を飾った。試合はまさにノーガードの打ち合いと言える展開だったが、改めてその内容を振り返ってみたいと思う。

 先手をとったのは日大三。1回表、四球で出たランナーを置いて3番の櫻井周斗がセンターオーバーのタイムリーツーベースを放つと、6番の日置航にもスリーランが飛び出しいきなり4点を先制する。対する早稲田実はその裏、注目の清宮幸太郎は高々と打ち上げた投手後方へのフライ(落球して一塁走者が二塁封殺となり記録はピッチャーゴロ)に倒れるものの、続く野村大樹が高めのストレートをレフト中段へ叩き込みすぐに2点を返す。ここで清宮の打球を処理した時に故障した日大三の先発、岡部仁が交代。両チームの先発投手が制球に苦しみ、1回を終わって30分以上が経過するという波乱のスタートとなった。

 次に試合が動いたのは3回裏。2番雪山幹太、3番清宮の連続四球でチャンスを作ると4番野村、6番小西優喜にタイムリーが飛び出し早稲田実が同点に追いつく。そして5回裏には野村のこの日二本目となるツーランで勝ち越しに成功。最悪の立ち上がりだった先発の池田徹が持ち直し、3回から6回まで日大三を三人ずつ抑えて試合は早稲田実ペースで終盤に入ったがここから怒涛の展開が待っていた。

 7回表、日大三はツーアウトランナーなしからチャンスを作り、櫻井のタイムリーツーベースなどで3点を奪い逆転。その裏に早稲田実は怒涛の六連打で5点を挙げて再び試合をひっくり返す。8回表には野村の二つの送球エラーもあって日大三が3点を返し1点差に迫るが、その裏に早稲田実はワンアウトからライト前ヒットで出塁した雪山を一塁に置いて、清宮が中村剛也(西武)に並ぶ高校通算83号をライト上段に叩き込んで見せた。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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