では、メガネの処方に定評のある眼科で検査をしてもらうのがいいだろう。梶田眼科(東京都港区)の梶田雅義医師を訪ねた。
事情を話すと梶田医師は、「頭痛や肩こりなど、からだの不調はありますか?」と聞く。
はい、もちろん。肩こりは職業病でバリバリだし、夜になるとテレビを見るだけで眼の奥が痛む。梶田医師はその原因が老眼にあると話す。
「遠視ぎみの人は『自分は目がいい』と思っていますから、老眼になっても裸眼で見ようとピント調節にがんばりすぎて、からだの不調になって表れるのです」
その背景には、多種多様な距離(とくに近い距離)にピントを合わせることが急増している現代の社会環境があるという。昔なら、目から40センチ程度先の手元に焦点が合えばよかったが、スマホ画面は25センチ先、パソコンは60センチ先、テレビは2~4メートル先とまちまちだ。
ピント調節の役割を担う水晶体は、その距離が変わるたびに必死で厚みを変える。しかも老眼世代は水晶体が硬くなっているから、なおさら負担になる。
■裸眼でテレビも見えていなかった
記者も梶田医師のもとで処方箋を作ってもらうことにした。検査は4種類で、どこの眼科でもおこなう基本的なものだ。結果を見て、梶田医師はこう言った。
「近くも遠くも、よく見えていませんね」
は? 近くはともかく、遠くはよく見えるはずですけど……。
「眼からの情報は脳で処理されるので、経験と勘で見えた気になっているだけです。現在、あなたの場合、裸眼で焦点が合う一番近い点は、5メートル以上先です」
まるでサバンナで暮らす民族……。いや、彼らは遠くも近くも見えるが、記者は裸眼ではテレビにもピントが合わない。衝撃だった。
遠くも見えていなかった記者の場合、遠用部にも+0.5Dの弱い度を入れる必要があるという。ピントの引き寄せをラクにするためだ。近用部は+1.75D。加入度数は+1.25Dと大幅に下がった。テストレンズを試着したが、遠くから近くに視線を移動しても、驚くほどゆがみを感じない。
では直接、メガネ店で視力検査をしても「快適なメガネ」を作ることは可能か。前出の畑田氏は言う。
「可能です。ただし日本には、適切な視力測定やレンズの選定などをおこなう人の国家資格がありません」