実際、昨年のリオ五輪代表でも所属クラブでスタメンに定着していたメンバーは数えるほどだった。仮に現在の海外組が国内に留まっていたら、さらに狭き門になっていたわけだ。こうした状況が、相対的にベテラン勢の存在(価値)を高めていたとも言える。

 南米の大国ではすでに若年層(10代)まで海外に流れており、国内のスター不在が深刻化しているが、日本ではまだその段階に至っていない。むしろ、今後は海外組が減少の一途をたどる可能性もある。そうなれば、自ずと空洞化もなくなるが、単に海外でニーズのない選手が国内に留まっていることを意味するだけだ。

 働き盛りの旬のタレントが海外へ渡ることによる国内の空洞化は、必ずしもネガティブなことではないだろう。「うまいヤツはうまい、というのがプロの世界。年齢は関係ない」とは、磐田を率いる名波浩監督の弁だ。たとえベテランだろうが、10代の若手だろうが、客を呼べるタレントがいてもいいわけだ。

 旬の海外組が国内組に「席」を空け、そこに次世代の有望株が早々と座り、ベテランの域に達して国内に戻った元海外組が若い彼らに経験を伝え、飛躍に手を貸す。当面、Jリーグにとって、こうした好循環を生み出すための取り組み(メンバー編成)が現実的かつ生産的かもしれない。すでに新シーズンの開幕を前に、旬の海外組である清武弘嗣(27)が古巣のセレッソ大阪へ復帰を果たした。

 キャリアの最盛期にある清武のケースは異例とも言えるが、本田圭佑(ミラン/イタリア)や長友佑都(インテル/イタリア)のほか、岡崎慎司(レスター/イングランド)や長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)らは、すでに30歳を過ぎベテランの域に入っていく。近い将来、彼らが中村俊輔らの先人に代わる新たな伝道師として、若いタレント群とともにJリーグを支えていく形が理想だろうか。

 1990年代後半から2000年代にかけての南米(ブラジルやアルゼンチン)が、そうした構造(Uターン組+若手海外予備軍)をもっていた。今後、海外組の帰還と若い世代の底上げを実現できるかどうか。空洞化に伴うJリーグの未来は、そこから持続可能な道が見えてくるのかもしれない。(文=サッカージャーナリスト・北條聡)

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