近年、Jリーグも「グローバル化」の波から逃れられない。その分かりやすい例が、代表クラスの選手たちの海外移籍だろうか。今オフも昨シーズン王者の鹿島アントラーズで中心となっていたMFの柴崎岳(24)が、スペイン2部のテネリフェに活躍の場を求めている。
2010年南アフリカW杯を境にして、海外(ヨーロッパ)組が日本代表の主軸を占める傾向に拍車がかかった。一方、Jリーグは旬のタレントを次々と失う事態に直面している。言わば、“空洞化”だ。
もっとも、これは日本に限った話ではない。世界屈指のタレント輸出国である南米のブラジルやアルゼンチンでは、すでに1990年代から同じ状況が続いている。いまや人、金、モノがヨーロッパという巨大マーケットに集中する時代。例外は豊富な資金力でトップクラスの外国人選手を買い漁る中国くらいのものだ。
才能ある選手が、より高みを目指すのはアスリートとして、ごく当然のことと言える。最高峰のマーケットでニーズがある限り、この流れは続くだろう。もっとも、それは日本人選手が国際レベルにおいて、それなりの競争力を持っていることの証でもある。
近年、海外組に代わってJリーグを引っ張る存在が、ベテラン勢だ。昨シーズンの年間MVPを受賞した川崎フロンターレの中村憲剛、鹿島の小笠原満男、ガンバ大阪の遠藤保仁、浦和レッズの阿部勇樹、さらには今オフにジュビロ磐田へ移籍した中村俊輔。現在のJリーグの「顔」といえるこれらの選手たちは、いずれも30代後半の大ベテランである。
また、FC東京へ加入した大久保嘉人も今年、35歳。川崎時代に3シーズン連続で得点王に輝いているが、それも30代に入ってからのことだ。かつて日本代表でも活躍した面々がいまだ健在というのは頼もしい限り。円熟の極みとも言うべきプレーを披露している。
こうした一騎当千のつわものたちに「旬を過ぎた」という表現は当てはまらないだろう。気がかりなのは若い世代だ。働き盛りのタレントが海外へ渡れば、そのぶん「空席」が生まれる。若手代表予備軍にとっては格好の機会なのだが、それをつかみそこねている印象が強い。