ジャンプはとにかく浮き沈みの激しい競技。けがで離脱している選手もいるとはいえ、昨季の総合トップ10で今季も同じく10位以内をキープしているのはわずか3人。昨季、1シーズンの最多記録を更新する15勝を挙げてぶっちぎりで総合王者となったペテル・プレブツ(スロベニア)も、今季は開幕戦の転倒の影響もあってか、未勝利のまま12位に沈み、予選から参戦中だ。
飛行機に乗っただけで、助走時の姿勢や重心の位置に微妙なズレが出るというほど繊細な競技で、葛西がここ3シーズンにわたって世界トップで戦い続けられたのは、大きさはもちろん助走路の特徴も異なる様々な台にも左右されない完成度の高いジャンプがあったから。
「ソチのシーズンにジャンプが固まった。それが安定感につながっている」
他の選手がジャンプ台の感触を確かめるために練習の機会を目一杯使っているのに対し、葛西は心身を休めるために本数を制限。飛ばなくても飛べてしまうという、誰も真似できないやり方を確立していた。ただ、今季ばかりはそうもいかず、手探りが続いている。
なかなか浮上できないもう一つの理由には、今季は試合のレベルが各段に上がっており、日本チーム全体がそれに乗り遅れてしまっているということもありそうだ。葛西に次ぐ1番手を争う伊東大貴と竹内択も今季は苦戦。ともにW杯転戦を途中で切り上げ、11日からのW杯札幌大会に備え日本で調整をしている。
各国とも優勝を狙える選手を揃え、最近は優勝と表彰台が1メートルに満たない飛距離で争われることも珍しくない。実力者が高いレベルで拮抗していることは、過去10季で総合連覇を果たした選手がいないという事実にも表れている。W杯歴代最多の53勝を誇るグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)でさえ、総合2連覇は成し得ていない。
例年、海外勢には長いシーズンの格好の小休止ラウンドにされてきた札幌大会だが、今回は次の試合が平昌での五輪プレ大会ということもあり、総合ランク1位から13位までがズラリ参戦。これまでとは比べものにならない贅沢すぎる大会になっている。