今冬テネリフェへ移籍したMF柴崎(写真:Getty Images)
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今冬テネリフェへ移籍したMF柴崎(写真:Getty Images)
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 MF柴崎岳が入団したテネリフェは、世界最高峰リーガ・エスパニョーラの1部に昇格できるのか?

 テネリフェは2部22チーム中で現在4位(24節終了時点)。1、2位が自動昇格、3~6位が昇格プレーオフを戦う。昇格に手の届くところにいることは間違いないだろう。

 しかし、見通しは甘くはない。

 1位レバンテは勝ち点52、2位ジローナは45、3位カディスが40と一歩リード。4位テネリフェは37だが、10位のレウスは33で7チームが勝ち点4差のなかでひしめき合っている。2部は22チームすべてに力の差がない。毎試合、どこが勝ってもおかしくはないのだ。

 事実、昨シーズン3位で昇格プレーオフを戦った鈴木大輔所属のジムナスティック・タラゴナが今シーズンは下位で喘いでいる。

 テネリフェは90年代には「ユーロ・テネリフェ」と異名をとり、欧州カップ戦でも勝ち進んでいる。リーグ最終節の勝利で、2度レアル・マドリーの優勝を阻んだこともあった。ホルヘ・バルダーノ、ユップ・ハインケス、ラファエル・ベニテスなどその後、レアル・マドリーを指揮することになった名将たちに率いられ、グランカナリア諸島出身のスキルの高い選手たちが真価を発揮した。

 「その隆盛を再び」というところだろう。

 しかし、テネリフェには大きなハンデがある。例えば首都マドリーまでは飛行機で約3時間。小都市の場合、近場の空港からさらに数時間をかけてのバス移動になる。アフリカ大陸に近い島だけに、移動の難しさを抱えているのだ(今シーズンもアウェイは2勝4分け5敗と大きく負け越し)。一方で、ホームゲームは抜群の強さを見せるのだが(今シーズンも7勝6分けで無敗)。

 柴崎が1部昇格に貢献するためには、まずは定位置を勝ち取ることが先決だろう。テネリフェは4-4-2が基本で(4-2-3-1も併用)、ボランチ起用が有力視される。ただ、ボランチはアルベルト、アイトール・サンス、ビトーロといずれも守備強度が高い猛者が居並ぶ。中盤が強いフィルターの役目を果たすことで、現在4試合連続無失点を誇っているのだ。

 日本人MFがポジション争いに割って入るのは簡単ではない。はたして、卓抜したボールスキルの高さを見せられるか。柴崎がクラブW杯の大舞台でレアル・マドリーを戦慄させたことだけは間違いない。出場機会さえ得られたら、一見なら彼のプレーはどんな相手も一泡吹かせるはずだが――。スペインデビューが待たれる。(文=スポーツライター・小宮良之)