2016年のWBC強化試合で二塁打を放ち、一塁へ向かう坂本勇人選手=金居達朗撮影 (c)朝日新聞社
2016年のWBC強化試合で二塁打を放ち、一塁へ向かう坂本勇人選手=金居達朗撮影 (c)朝日新聞社
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 88年世代の野手の筆頭格が、円熟期を迎えつつある。巨人坂本勇人が、リーグ優勝とWBC制覇の2つの“奪還”に意欲を燃やしている。

 キャンプ初日の2月1日、毎年の恒例行事である青島神宮の参拝で、坂本は絵馬に「世界一 日本一 100打点」と書いた。3月に行われるWBCでの世界一奪還から、3年ぶりのリーグ優勝、さらには12年以来となる日本一に向けての決意の表れだ。

 高卒1年目でのプロ初安打、初打点が、延長戦での決勝打という衝撃のデビューから、2年目にはショートのレギュラーとして全試合出場を果たした。プロ4年目の10年にはキャリアハイとなる31本塁打、85打点を記録し、12年には初タイトルとなる最多安打に輝くなど、大型補強を続けるチームの中で、生え抜き選手として不動の地位を築いた。

 しかし、慢性的な腰痛などの影響もあり、13年からは3年連続で打率が2割6、7分台と低迷し、成績的にも印象的にも、頭打ちの感が否めなかった。15年には、5年間続いていた全試合出場がストップし、レギュラー定着後、出場数、安打数、得点などが自己最少となった。

 国際試合でも、初の大舞台となった13年の第3回WBCでは、日本代表は初めて優勝を逃し、坂本自身も打率.240と振るわなかった。15年の第1回プレミア12では、記念すべき大会創設第1号本塁打を放ち、最優秀守備選手にも選出されたが、打率は2割ジャストで、チームも準決勝で敗退(3位)。世界の舞台では、悔しい思いしかしていない。

 いい選手には間違いないが、もうひとつ、成績的にも、印象的にも突き抜けたものがない。そんな坂本に、変化が見え始めたのは、14年のオフに阿部慎之助に代わってチームの主将を任された頃からだ。26歳での主将就任は、巨人では戦後最年少だった。主将1年目となった15年は、前述したように成績的には振るわなかったが、遊撃手としてリーグトップの守備率.982を記録するなど、新境地も開きつつあった。

 そして昨季、4月の阪神戦で3打数連続本塁打をマークするなど、開幕から好調をキープした坂本は、シーズンで打率.344を記録し、セ・リーグでは遊撃手初となる首位打者に輝いた。飛躍の要因は、打撃フォームの改造にあった。上半身の使い方や足の上げ方で、松井秀喜氏を参考にした体重移動を取り入れた。四球数がキャリアハイの81個と大幅に増え、最高出塁率(.433)のタイトルも獲得した。

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