楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏が認めている通り、この契約は彼とジェラール・ピケとの個人的な交際なくしては成立し得なかった。地元メディアの報道によると、副業としてビデオゲーム会社を営むピケが、バルセロナに本社を持つ動画配信会社で楽天の子会社である『Wuaki.TV』の知り合いを介して三木谷氏にコンタクトを取り、バルセロナの日本ツアーの際に2人は初めて出会った。

 昨年6月にピケが楽天本社を訪ねるなどして親交を温めている間にスポンサー契約の話が持ち上がり、ピケがバルトメウ会長へ連絡。その夏のアメリカツアーの際にピケ主催でサンフランシスコの三木谷氏宅でバルトメウ会長、マネル・アロージョ副会長らを交えた顔合わせの会食が行われ、その後1年余りの交渉期間を経て今回の発表となったわけだ。

 美談に華を添えたのは、仲介人であるピケがコミッションを要求せず、実際にビタ一文受け取っていない、という事実だった。バルセロナの会長になるのが夢だというピケが“家族”に友人を紹介したしたことがきっかけで“家計”は大いに潤うことになった。ピケのこの無償の努力、孝行息子ぶりがバルセロナファンの琴線に触れたのも当然だろう。

 高額な契約金だけでなく、本来ビジネスであるスポンサー契約が友情や家族愛という文脈で語られることで両手を広げて迎えられる。楽天にとってもバルセロナにとっても幸せな合意だった。(文・木村浩嗣)