運ばれてきたチャーハンの具材をみると、チャーシュー、ネギ、タマゴと日高屋と同様だが、大きな違いは油分だ。米の一粒一粒が炒め油でコーティングされている。
まずチャーハンを頬張る。うま味がガツンと脳を揺さぶった。実にオイリーだが、油に溶けだしたチャーシューのエキスがいい仕事をしていて、決して単調ではない。塩気もかなり強いが、油分とのバランスが絶妙で、反射的に二口、三口とかきこみたくなる。
それを自制し、すかさずご飯を口に放り込む。これは、良い。ご飯の甘みと、チャーハンの油分と塩気が混ざり合い、チャーハンが本来もっていたうま味が口の中で膨らんでいく。それはご飯でもチャーハンでもない、新たな味わいの地平だ。完全におかずとして成立している。
「餃子の王将」の焼めし450円、ライス(中)170円。現状ではもっともご飯にあうチャーハンといえそうだ。
●最高級中華料理店のチャーハンの味は?
さて、ここまで庶民的な中華料理チェーン2社を食べ歩いてきたわけだが、趣向を変えて最高級中華料理店のチャーハンも検証しておきたい。今回、記者が選んだのは横浜中華街に本店を構える「聘珍樓」。ホームページによると「日本に現存する最古の中国料理店」であり、客単価は1万~1万5000円にもなる日本を代表する高級店だ。
ちなみに同店のホームページには「2~3人の飲茶から、400人のパーティーまで存分にご利用いただけます」という記述があったが、1人でチャーハンとライスを注文する客については何の言及もなかった。一抹の不安を覚えつつも、意を決して扉をくぐった。
入店して2秒で後悔した。
まず記者の目に飛び込んできたのは、一流ホテルで見るようなレセプション。その周囲には正装したスタッフが待機しており、明らかにこれまでの中華料理店とは一線を画すオーラを放っている。
記者が最初に案内されたのは、品の良い黒革のソファが並べられた待合室。普段、牛丼屋やコンビニ弁当などで食事を済ませることが多い記者にとっては、レストランに待合室があること自体がカルチャーショックだ。口が裂けても「チャーハンとライスください」などと言える雰囲気ではない。足が震える。
ほどなくして席に案内されたのだが、そこでも未知の体験が続く。まず、メニューが5冊ある。定番メニューやコースメニュー、飲み物など別々の用途があるようだが、どれから読めばいいのかまったくわからない。そして、メニューをぱらぱらとめくっていると17800円(フカヒレの姿煮込み)、9500円(干しアワビの姿煮込み)といった信じられない数字が目に飛び込んでくる。鮮魚を使用した料理では「時価」のものすらあった。