炭水化物をおかずにご飯を食べる――。一汁三菜が模範とされ、「糖質制限ブーム」で炭水化物がなにかと悪者扱いされる現代において、破天荒にすら映る行為だ。しかし、根強い愛好家がいるのもまた事実。「お好み焼き定食」「ラーメンライス」、考えてみればポテトコロッケでご飯を食べるのもその系譜であり、それぞれ確固たる「市民権」を確立している。
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その魅力は、何をおいても圧倒的な満足感だろう。一心不乱にかきこめば、ずしりと胃にくる重量感、血糖値は急上昇し、身じろぎするのも億劫なほどの満腹感と、慈母に包容された幼児のような安息感が身体を満たす。他の食品では決して代替できない快感といえる。
こうしたメニューでいつも話題になるのが「おかず」と「主食」の境界線はどこかという点である。普及しているメニューをみると、「米と小麦粉」「米とイモ類」といったように、違う種類の炭水化物を組み合わせた場合はおかずと主食という構図が成立しやすい。
では、「米と米」の組み合わせはどうか。記者は、これまでチャーハンをおかずにご飯を食べるという複数の人物に会ったことがある。その理由は「大盛りよりはるかにお腹がいっぱいになるから」とのことだ。この組み合わせこそ、究極の「炭水化物のおかず×ご飯」メニューといえるかもしれない。
そこで、記者が代表的な中華料理チェーン店などのチャーハンとご飯を食べ比べ、もっともご飯のおかずに適したチャーハンを捜索。「炭水化物のおかず×ご飯」メニューの新たな可能性を模索した。なお、公平を期すために取材であることは明かさずに試食を行っている。
●「チャーハンとライスください」 「日高屋」の厨房を混乱に
最初に足を運んだのは「熱烈中華食堂 日高屋」。首都圏を中心に300軒以上を展開しており、リーズナブルなおつまみとアルコールを提供するチョイ飲み路線がヒットし、近年集客を伸ばしている。もちろん、チャーハンも看板メニューのひとつだ。
足を踏み入れると、店内は餃子や鶏のから揚げなどでお酒を楽しむ人々でにぎわっていた。着席し、「チャーハンとライス」をください、と注文する。だが、ここで問題が発生した。
「チャーハンと……、ライス…?」
注文を復唱するスタッフの口調に明らかな動揺があった。記者も焦りを覚えるが、ここは平静を装い、「そうです。チャーハンとライス」と回答。中華料理店でチャーハンとライスを同時に注文することは常識であるというような空気を演出した。だが、ここからが“試練”の始まりだった。
実は記者はカウンター席に座っており、その向こう側は厨房である。スタッフが記者の注文を厨房に伝えた途端、こんな会話が聞こえてきた。
「チャーハンと、ライス?」
「え?」
「聞き違えじゃないの?」
「でも確かに聞きました」
「マジ?」