厨房を混乱に陥れてしまうほど、チャーハンとライスという組み合わせは奇異なものだったということか……。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになったが、心を無にして料理の到着を待った。

 数分後、満を持してやってきたチャーハンとライスは、そうした不安を払しょくして余りあるほど見事なものだった。まずチャーハンである。具材はシンプルにチャーシュー、ネギ、タマゴの三種。それらが米とともにしっかりと炒められており、香ばしい醤油の香りが食欲をかきたてる。チャーハンの典型例として百科事典に掲載したいほど、チャーハン然としたチャーハンだ。

 だが、これは主役ではない。あくまでもおかずなのだ。そして、今回の主役たるライスに視線を移す。普通だ。通常のお茶碗に盛りつけられた通常のご飯だ。だが、この普通さこそ、ご飯が持ちうるもっとも尊い美徳であることは、日本に生きる多くの人々に共感していただけることだろう。

 さっそく、チャーハンを口に運ぶ。率直な感想は「優しい味」だ。塩気はそれほど強くなく、油分は控えめ、ゆえにあっさりとした口当たり。具材は存在感をあまり主張しないが、かみしめると米の甘みがじんわりと広がる。どこか懐かしい、毎日食べたくなるようなチャーハンだ。

 そして、すかさずご飯を口に放り込む。

 ここで予想もしていなかった事態が起きた。

 口のなかを満たすチャーハンのうま味。そこにご飯が加わる。ここまでは問題ない。だが、咀嚼をした途端、チャーハンの味が消滅してしまうのだ。

 普段あまり意識しないが、ご飯の甘みと香りはとても強い。チャーハンの味付けが控えめであるがゆえに、ご飯に負けてしまうようだ。これでは、おかずにはならない。

 念のため補足すると、決して日高屋のチャーハンがまずいと言っているわけではない。単体でも十分満足できるクオリティーであり、お酒を楽しんだ後に締めとして食べても、そのあっさりとした味付けゆえに重くなることもない。店の戦略にうまく合致したチャーハンであることは強調しておきたい。

 値段はチャーハン430円、ライス160円。この値段としては信じられないほどの満腹感を得ることができた。しかし、あくまで「ご飯のおかず」として考えた場合、ベストとはいえない結果である。

●「王将」のチャーハンが見せたダブル炭水化物の新たな境地

 次に訪れたのは「餃子の王将」だ。こちらは、リーズナブルな値段でボリューム満点の中華定食が食べられるのが魅力。提供メニューの味付けは店舗によって個性があるといわれ、愛好者のなかにはその日の気分で利用する店舗を変える者もいるという。今回は都内でも特に人気が高い都内にある水道橋店を選んだ。

 注文すると、今回もスタッフの復唱は「焼めしと、ライス?」とやはり疑問形…。チャーハンとライスを一緒に食べる行為はここまで非常識ものだったとは。とはいえ、もはや後戻りはできない。

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