わずか90分間で世界の注目を一気に浴びた。ロンドン五輪サッカー男子1次リーグの第1戦。その立役者は、値千金の決勝弾をたたきこんだMF大津祐樹。サッカージャーナリストの安藤隆人氏は、大津を見た目とは違い「熱い男だ」と言う。

 あだ名は「チャラ男」。イケメンで、その話し方に今風の若者の軽さがあることから、ファンの間でそう呼ばれるようになった。

 しかし、中身は全く違う。サッカーには誰よりも情熱的で、スペイン戦で勝利を告げるタイムアップのホイッスルが鳴り響くと、大号泣した。

 この熱さは高校時代から変わっていない。成立学園高校(東京都)で1年生からレギュラーになったが、線は細かった。高3になるとプロのスカウトの目に留まるようになったが、「エレガントなプレーヤー」という印象は変わらなかった。

 しかし、どの試合でも、負けた後は誰よりも悔しい表情を見せた。

 高3の全国高校サッカー選手権都大会準決勝。強豪・帝京と激突した成立学園は、大津を筆頭に有能な選手がそろい、優勝候補の筆頭だった。だが、前半の立ち上がり早々に味方が退場し、10人になってしまう。

 最後はPK戦で敗れ、大津の高校サッカーは幕を閉じた。

 敗退が決まった瞬間、大津はその場に膝から崩れ落ち、大号泣。ロッカールームでジャージーに着替えてからも涙が止まらない。

 試合後にインタビューすると、

「悔しいです……僕が……僕がもっとしっかりしていれば……自分のプレーをやり切れなかった」

 自責の言葉しか出てこなかった。

※週刊朝日 2012年8月10日号

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