筋力トレーニングが今ほど盛んではなかったひと昔前、投手の球速は一定以上になるには「天賦の才が必要」とみなされていた。ただし、制球力は「練習で磨けば上がる」。だからこそ、三浦は後者を求め続けてきた。小谷コーチの門下生には巨人の内海哲也、ヤクルト石川雅規らがいるが、いずれも球速よりも制球力を身上とするタイプだ。球速は30代後半を迎えると急降下することが多いが、制球力は球速ほどに変わらない。だからこそ、長く現役を続けられたのだろう。
リーゼントスタイルの髪形から怖そうな風貌に見えるかもしれないが、実は穏やかで優しい性格だ。子供のころから阪神ファンだったが、FAで阪神から誘われた2008年オフも、ファン感謝デーで聞こえた「残ってくれー」の声に残留を決心した。少年ファンへのグラブプレゼントは10年を超え、報道陣に対しても、いつも丁寧な対応。通算172勝の実績を残しても、誠実な人柄は際立っていた。
29日の最終戦では、現役最後の登板が予定されている。プロ野球記録を更新する24年連続勝利がかかるが、巨人の勝敗次第では、CSの開催権も左右する大一番となる。現役最後の“クジラ”が、横浜の港で大きな潮を吹いて終われるか。(文=日刊スポーツ・斎藤直樹)