「今は、どうなんですかねえ。でもいまだに宮さんと話していると、どんな時でも高畑さんの話になりますね」

「あとね、これはちょっと普通の人にはわからない感覚だと思うんですけど、二人きりになった時に『鈴木さんさ。パクさん(高畑監督)の元から、いろんな人が去っていったでしょう。残ったのは、俺一人だよね』って本当に嬉しそうに自慢したりするんですよ」

 宮崎駿から高畑勲への深い愛情を感じずにはいられない。

「うん、宮さんは高畑さんを愛しているんでしょうね。『ぼくの見る夢はいつもひとつしかない。パクさんが出てくるんだ』って言っていたこともある。ところが、片思いなんですよね……高畑さんていうのはひどい男ですよ(笑)」

 2013年に公開された二人の最新映画『風立ちぬ』(宮崎監督作品)と『かぐや姫の物語』(高畑監督作品)は、当初同日に別々の劇場で公開する予定だった。

 だが、高畑監督が完成を4か月遅らせてしまったことで、同日公開は叶わなかった。

「両方とも公開し終わってしばらく経った、去年の年末くらいかなあ。宮さんと高畑さんと僕、3人きりになったんです」

「でね、僕そこでこう言ったんですよ。『2本同日公開がうまくいかなかったので、ちょっと思いついたことがあるんです。高畑さんと宮さんは年齢も年齢だから、いずれこの世から去る。なので、同じ日に死んでもらえませんか? 2回お別れ会をやるのも面倒くさいので』と(笑)。こういう時の二人がおもしろいんですよね。宮さんはね、『僕はパクさんよりは長生きするよ!』って言う。で、高畑さんは笑っているだけなんですよね、にこにこと」

「高畑さんは、また勝手に次回作を考えてるみたいだけど……僕は関わらないようにしてます。(笑)」

(取材・構成/門倉紫麻)

※『手塚治虫文化賞20周年記念MOOK マンガのDNA―マンガの神様の意思を継ぐ者たち―』鈴木敏夫スペシャルインタビューより一部抜粋