今季はチーム得点640がリーグ最多で、2位ヤクルトに83点差をつけている。昨年はリーグ3位の506点で、1位ヤクルトに66点差だった。1年で100点以上も得点が増えた要因は、1~3番を打った田中広輔、菊池、丸の成長に加え、ベテラン新井の奮闘、若武者鈴木の台頭だ。さらに、序盤に本塁打王を独走するなど絶好調だったエルドレッドが負傷すると、中日から移籍のルナが穴を埋めた。チーム防御率は昨年の2.93から若干落ちたが(それでも3.28はリーグ1位)、リーグ最高打率、最多本塁打、最多盗塁の打線で逆転勝ちを重ねていった。

 実は、広島はエース格のジョンソンと先のエルドレッド、ルナ以外にも、プライディ、デラバーといった外国人を獲得している。黒田には球界最高年俸を支払い、ジョンソンとはシーズン中に大型契約をまとめた。それができたのも、09年から使用するマツダスタジアムが連日満員の盛況となり、前田の移籍で得た約20億円という巨額資金があったからだ。これらを惜しみなくつぎ込み、その投資の成果が出た。

 球団運営資金が劣っていたこともあり、広島は、93年から始まったフリーエージェント(FA)制度で川口、江藤、金本、新井、黒田という主力を失ってきた。黒田は大リーグだが、他の選手は同一リーグのライバル球団に移った。しかし、93~06年までの逆指名ドラフトが終わってから10年が経ち、アマチュア球界のトップ選手を補強できるようになった。他球団の大型補強に屈していた時代を耐え抜き、12球団で最も優勝から離れていた広島が、ようやく報われた。(数字は10日現在)

(文=日刊スポーツ・斎藤直樹)

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