しかしこの男、ただ者じゃなかった。翌26日のロッテ戦で、1回に先制15号本塁打をバックスクリーン左に打ち込んだ。この一打が景気づけとなり、チームは防御率1位のロッテ先発石川歩を打ち崩し、打線は2カ月ぶりの2桁得点(11点)。柳田は2回の一ゴロ、7回の2点二塁打で合計4打点の活躍だった。

「昨日はやらかしたので、今日は頑張ると決めていた」

 これぞ一発勝負の甲子園とはまた違った、ペナントレースを争うプロ野球の醍醐味(だいごみ)。あまりにも鮮やかな復活劇だ。日本ハム西武に敗れたこともあり、ソフトバンクが1日で首位を奪回した。

 柳田劇場は、27日にも続きがあった。1、2回に連続適時打。3回にプロ入り初の3試合連続本塁打となる16号3ラン。今度は1試合5打点で14-3の大勝を導いた。翌28日は空砲となったが、自己記録をさらに更新する4試合連続アーチ。首位転落のきっかけとなった後逸(記録はランニング本塁打)から、立ち直るどころか成長の糧としたようにさえ見受けられる。

 一方の日本ハム。大谷翔平が存在感を示した。首位に立った翌日の26日、大谷は体調不良で試合直前に欠場となり、主軸を欠いた打線は4安打で1点しか奪えず、わずか1日で首位を明け渡した。だが、大谷は27日に代打で登場すると、バックスクリーンへ20号本塁打をたたき込んだ。同一シーズンで「20本塁打+勝利」は51年の藤村富美男(阪神=23本塁打+1勝)以来65年ぶりの偉業。「1日天下」の暗いムードを、たった1打席で吹き飛ばして見せた。

 両軍ともに、土壇場で主役級が活躍し、わずか勝率1厘差のがっぷり四つ。見逃せない戦いが続く。(文=日刊スポーツ・斎藤直樹)