知っているようで知らない遺言書のあれこれ。週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』(朝日新聞出版)に掲載されたQ&Aを一挙公開。監修は行政書士の竹内豊さんです。
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【Q1】ビデオレターで遺言を残しても大丈夫なの?
【A1】ビデオレターで残した遺言は無効です
法律では自筆証書遺言の成立について、遺言を残す人が(1)遺言の全文を自分で書くこと(2)日付を自分で書くこと(3)氏名を自分で書くこと(4)遺言書に押印すること――という四つの方式を厳格に定めています。したがって、ビデオレターの遺言は法的に無効です。ビデオレターは撮影されたものであり、書かれたものではないからです。ビデオレターに押印したとしても、(1)~(3)の要件を満たすことができません。
自筆証書遺言として有効なのは、自筆の書式形式のみです。ビデオレターのほか、パソコンの動画による遺言、録音テープに自分の声で吹き込んだ遺言、携帯電話やパソコンのメールでの遺言も無効です。これらで残した場合、遺言はないものとみなされます。相続人全員で遺産分割協議をおこない、全員の合意に基づいて遺産を分け合うことになります。
【Q2】家出して音信不通の相続人がいる。どうすればいい?
【A2】家裁に財産管理人の選任の申し立てをしましょう
法律上、従来の住所または居所を去って容易に戻る見込みのない人を「不在者」といいます。本来、遺産分割協議は相続人全員でする必要があり、相続人に不在者がいると、いつまでたっても遺産分割協議ができません。このため民法では、相続人に不在者がいる場合、不在者の相続人等の利害関係人の申し立てに基づいて家庭裁判所が不在者の財産管理人を選任し、ほかの相続人と財産管理人との間で遺産分割協議ができるよう定めています。
財産管理人選任の申し立て先は、不在者の従来の住所地か居所地の家庭裁判所です。選任された財産管理人は、不在者の財産を調査し、財産目録などを作成して家庭裁判所に提出する必要があります。財産管理人が不在者の代理人として遺産分割協議に参加するには、事前に家庭裁判所の許可を得なければいけません。
現在、自分の相続人になる人のなかに行方不明者がいる人は、遺言書を残しましょう。遺言書があれば、遺産分割協議をしなくても財産引き継ぎの手続きが可能だからです。