【Q3】夫婦の連名で遺言書を作ることはできる?
【A3】夫婦が同一の紙に書いた遺言書は無効になる恐れ
民法では、2人以上の者が同一の証書に書いた遺言書(「共同遺言」)を禁止しています。夫婦が同一の紙に書いた遺言書は、共同遺言に該当して無効になる恐れがあります。
しかし、同一の紙に2人以上の者が遺言を書いていても、内容がそれぞれ独立し、切り離せば2通の遺言書になるようなケースを「共同遺言に該当せず有効」とした判例があります。たとえば、夫名義の遺言書2枚と妻名義の遺言書1枚がつづられていたなど、2人以上が同一の封書に遺言を残していても、内容や形式によっては有効と判断される場合もあるのです。
とはいえ、有効性の判断に迷うような遺言書は無効になるリスクが高く、しかも、「争族」の火種になります。避けるようにしましょう。
【Q4】「検認」ではどのような手続きをするの?
【A4】申立人と相続人の立ち会いのもと、家裁で開封します
自筆証書遺言を執行するには、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。自筆証書遺言は検認をしないと、不動産の名義変更、預貯金の払い戻しなど一切の相続手続きを進めることができません。
検認の手続きを始めるにはまず、遺言書(公正証書遺言を除く)の保管者、または遺言書を見つけた相続人が申立人となり、前述の家庭裁判所に検認の申し立てをします。申立人と全相続人に対し、家庭裁判所から検認の期日の通知が届きます。検認の期日に家庭裁判所で申立人と相続人の立ち会いのもと、遺言書が開封されます。申立人は必ず出席しないといけませんが、相続人は各自の判断で出欠を決めることが可能です。
最後に、申立人か相続人などが家庭裁判所に「検認済証明書」の発行を申請します。検認済証明書を法務局や金融機関などに提示しないと、自筆証書遺言の遺言執行はできません。検認の申し立ての準備から検認の手続きが完了するまで、通常2カ月程度かかります。
【Q5】葬式後、うっかり自筆証書遺言を開封してしまった
【A5】そのままの状態で検認の申し立てを家裁にしましょう
封をされている自筆証書遺言を開けてしまった場合、そのままの状態で家庭裁判所へ検認の申し立てをしてください。再びのりづけして封を閉じることは厳禁です。開封したからといって遺言の効力は変わりません。しかし、ほかの相続人が「書き換えたのでは?」と疑惑を抱く可能性もあるので注意しましょう。
※週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』より
竹内行政書士事務所代表
行政書士・竹内豊
たけうち・ゆたか/中央大学法学部卒業後、百貨店勤務を経て2001年から現職。遺言・相続を専門として活動する。著書に『親に気持ちよく遺言書を準備してもらう本』(日本実業出版社)、『親が亡くなったあとで困る相続・遺言50』(共著、総合法令出版)など多数