この坂井の銀メダルに力をもらったのは、東京五輪以来のメダル獲得を目指す、男子4×200mリレーのメンバーだ。
第1泳者をつとめる萩野公介は「昨日のような失敗はできない」と、男子200m自由形で7位に終わった悔しさを胸に、前半から積極的なレースを展開。ラスト50mで一段階ギアを上げた萩野は、トップのアメリカに0秒12まで迫る1分45秒34の2位で、江原騎士にバトンを渡す。172cm59kgの小柄な江原は、水面を跳ねるような小気味良いテンポで3位メダル圏内をキープして小堀勇氣に引き継ぐ。日本選手権では4番手で代表に選ばれた小堀だが、この日は最後まで粘り強い泳ぎをみせて、ラップタイムで1分45秒71の好タイムをマーク。最後は、大ベテランの32歳、松田丈志に託された。
松田は「金メダルも夢ではない」と、繰り返し口にしてきた。それだけ、最高のメンバーで五輪に挑めるという自負があった。金メダルには届かなかったとしても、松田は最後まで諦めなかった。追い上げてきたオーストラリアを振り切り、7分03秒50で3位、銅メダルを獲得。実に52年ぶりの快挙を成し遂げた。
いい流れを引き戻して、前半戦を終了した競泳競技。後半戦のスタートとなる明日は、今日の準決勝でオリンピックレコードをマークした男子200m平泳ぎの渡辺一平、さらに女子200mバタフライにはカザン世界水泳で優勝した星奈津美が、それぞれ決勝レースに登場する。坂井とリレーのメダル獲得で得た勢いを確実に本流に乗せ、一気に世界を飲み込んでいってもらいたい。(文・田坂友暁)