修道女でも警官でも敵サポーターでも、気になる相手には歌と拍手を捧げずにいられない陽気なアイリッシュ。やりすぎな感も否めないが、相手を巻き込んで笑顔にしてしまうパワーは天下一品だ。リヨンの街中でサポーターを監視していた警官も、最後は彼らと一緒にしゃがんだり立ち上がったり、セレブレーションに取り込まれてしまっていた。

 そんなアイルランドサポーターだが、やる時はやる。サッカーファンで満員となった電車では、市民が無事に降りられるようエスコートし、リール市内でパーティーを繰り広げたあとは『Go West』の節にのせて「Clean up for the boys in green」と歌いながらゴミ拾いをした。代表チームのためにも、片づけをしようといったところか。しかし、北アイルランドにしてもウェールズにしても、即興で歌い出すサッカーファンの才能は見事である。『Go West』のメロディーにのせれば、彼らは何でも歌えるらしい。

 各チームのファンがポジティブな注目を浴びたことで、アイルランド『インディペンデント』紙は「われわれが世界一のファンだという自負を捨てる時がきたのか」と自信喪失気味だが、そんなことはない。パリのアンヌ・イダルゴ市長は、アイルランドサポーターと北アイルランドサポーターは「スポーツマンシップの模範」だと称賛。文化人や政治家を対象とするパリ市で最も栄誉ある「グラン・ヴェルメイル・メダル」を、両サポーターに授与する意向だという。

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