あわれなのび太少年は、決して他人事ではない。誰しも、多少なりとも毎日の生活が面倒だし、恥はかきたくないし、新しいことにチャレンジせずに昼寝でもしていたい。回避性パーソナリティの素地は誰にでもある。そんな回避性パーソナリティの人が、自信をもって人生を送るためにはどうすればよいのだろうか。

 岡田氏はいう。彼の見てきた患者の中で、回避性パーソナリティを克服し、社会人として活躍できるようになった最初の一歩は、「助けを求め、相談できる」人を周囲に見つけることだと。そして、相談を受けた人は、「助言をしたり励ましたり」するのではなく、「共感的に受け止める」ことが何より重要なのだという。回避性パーソナリティの人はそれまでの人生で、他人から共感を得た経験があまりない。そのため、自分の悩み事なんて誰も真剣に受け止めてくれないだろうと思い込んでいる。そこに共感をもって自分の話を聞いてくれる人物があらわれると、それだけでその人には自信となるのだ。

 ところで、そう考えると、のび太の問題を解決するアドバイスよりも、まず彼の悩みに共感し、ポケットから道具を出してくれるドラえもんは、のび太を回避性パーソナリティから救うために未来からやって来たのではないかと深読みしてしまう。なにしろのび太は将来、立派な大人になり、しずかちゃんを射止めるというのだから。

 もくろみが外れ失敗に終わることも多い秘密道具だが、ドラえもんののび太への共感があればこそ、それはそれで立派な解決策となるのだろう。

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