田中の場合、1年目の2014年は20先発中11戦で7回以上を投げた。ただ、右ひじのケガもあってか、5戦目以降の16先発のうち9戦で7イニングもたずにマウンドを降り、ジリ貧の印象もあった。

 続く2015年はプレーオフも含めた25試合の先発登板で、7イニング以上を投げたのは11戦のみと半数にも満たない。勝敗、防御率は総じて上出来でも、“支配的”という印象を与えられなかったのは投球回数が増えなかったためだ。

 しかし、迎えた今シーズンは開幕から順調にヤンキースのローテーションを支えている。特に5月は、先発した5試合のうち4試合で7イニング以上を投げた。この5試合中、4戦でチームが勝利を収めたのは偶然ではないはずだ。

「田中は去年より良いピッチングをしているね。スライダー、スプリッターのキレが良い。正直、すぐにでも手術を受けるべきだと思ったが、少なくとも今の彼は身体を気にしながら投げているようには見えない」

 5月中、某チームのスカウトはそんな言葉を残していた。その言葉通り、2014年に負った右ひじ靭帯の部分断裂について心配する声ももう消え失せた。3年目を迎えて注目度自体は下がったとはいえ、少なくともここまでの田中は立派に“エース”と呼べるだけの働きを続けていると言って良い。

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