いつでも本田が右サイドにいるとは限らない。今回のようにケガをする時もある。そんな場合にどう戦うか。ブルガリア戦は“脱本田”を示した試合でもあった。屈強なフィジカルでボールをキープしてタメを作るのも本田得意のプレーだが、ブルガリア戦は本田がいないことで、逆にダイレクトプレーが増えたというプラス・アルファもあった。特に生き生きと躍動していたのが2点を決めた香川だ。

 前半27分には左サイドを駆け上がった長友からのクロスを、香川にしては珍しいヘディングで決めた。アシストした長友が「トラップが浮いてしまったけど、練習していたので上手く上げることができた」と言えば、香川も「長友がオレに“アモーレ”してくれた」と記者団を笑わせる。長友自身も、前日の会見で女優の平愛梨さんとの交際を正式発表したことで、試合後は「公になったので楽になったというか、吹っ切れました」と笑顔を見せていた。

 ブルガリアの面々はシーズンが終わって疲労と気の緩みもあったのだろうが、それでも日本は大量7点を奪ったこと、それも試合の流れの中でのゴールはチームの熟成度が増していると評価していい。さらにリオ五輪代表の浅野拓磨や遠藤航を起用し、浅野は自らの突破で獲得したPKを決めるなど、若手の成長を促している。こうしてみると、W杯アジア最終予選のハリルホジッチ監督のテーマは、チームの完成度を高めることと、底上げを図ることにあることが透けて見えてきた。

サッカージャーナリスト・六川亨【週刊サッカーダイジェスト・元編集長】)

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