熊本地震の被災地でぜんざいを配る川渕映子さん(左)
熊本地震の被災地でぜんざいを配る川渕映子さん(左)
川渕映子さん
川渕映子さん

 被災地を支援するボランティア活動をしたいと考える人は、少なくないだろう。しかし、“最初の一歩”がなかなか踏み出せない。「素人が出て行って、迷惑をかけてはいけない」と思うからだ。そこで、災害支援30年の経験がある66歳の“ボランティアおばちゃん”川渕映子さんに「すべきこと」「してはいけないこと」などの心得を聞いてみた。

 まず、川渕さんの活動を紹介したい。海外支援を目的とした草の根NGO「アジア子どもの夢」と、東日本大震災の被災地を支援するボランティア団体「東北エイド」の代表を務めている。いずれも拠点は富山市内。国内外で災害が起こると全国各地の企業から「被災地に行くなら支援物資を提供したい」などの申し出があり、地元の自治体からは「義援金を届けてほしい」と声がかかる。被災地支援を職業としているわけではないが、いわば“ボランティアのプロ”。川渕さんのもとへ、人、物資、お金、情報が集まる存在である。

 災害時にはバスやトラックをチャーターして炊き出しの食材や支援物資を詰め込み、ボランティア団体のメンバーと一緒に被災地へ向かう。活動の鉄則は、「ボランティアは“自己責任型”であれ」。川渕さんの「ボランティアの心得第1条」といえる。1996年にベトナムの孤児のために教育施設を建設した活動がスタートとなり、スリランカのスマトラ地震(2004年)、中国・四川大地震(08年)、東日本大震災(11年)、フィリピン・レイテ島の台風被害(13年)、そして本地震の被災地に足を運んで、お金や支援物資を直接、届けてきた。海外渡航時の飛行機だけは例外とし、交通手段はすべて自前。宿泊場所、食事とも自分で確保すべきだという。

 「心得第2条」としては、「災害発生から日の浅い時期には、甘い飲み物・食べ物が喜ばれる」と強調する。4月14日に発生した熊本地震もそうだった。今回、川渕さんは12日に96歳の義父を看取り、14日の通夜と15日の葬儀で喪主を務めた後、18日に富山市内を出発。19日には熊本県益城町でぜんざい1000食、豚汁2000食を配り、20日に帰着した。

 東日本大震災後、宮城県石巻市内で炊き出しをしていて「甘いものない?」とよく聞かれたらしい。おはぎやチョコレートなどが喜ばれた。スリランカでは現地の人とスーパーに買い物へ行き、義援金で真っ先に購入したのが砂糖と紅茶だった。茨城県で鬼怒川が氾濫した時も、被災地でコーヒー出すと、砂糖がすぐになくなった。

「普段はブラックで飲む人も砂糖を欲するのが、災害から間もない時期の心境。癒やされるんでしょう。ちなみに、たばこ・酒などの嗜好品は、取り合いになるのでNGです」(川渕さん)

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