「心得第3条」には、「被災者と連絡を取り、ニーズを聞きながら継続した支援を」と述べる。東日本大震災後は、2014年11月末までに“支援バス”を32便運行し、復興の現状に沿って求められるものを届けた。ライフラインが寸断され、飲料水がないところにカップラーメンではだめだ。身辺が落ち着けば、衣料品や家電製品などあらゆるものが必要になる。「四季の変化にも敏感になってほしい」とのこと。強い要望で、蚊取り線香を届けたこともあった。

 ちなみに、「女性がちゃんと化粧をするようになったら、日常を取り戻したと判断して、全面支援から部分的なサポートへ切り替えます」とのこと。支援し過ぎないことも大切だという。ゴールデンウイーク中は、たくさんの人が本へ行っているので、避けたらしい。支援のタイミングは重要である。
 
 川渕さんはこれまで、避難所よりも在宅避難者へ主に支援物資を届けて来た。「草の根活動ほど、求められます」という思いがある。「300人いる避難所に、200人分の食べ物を渡そうとしたら、止められました。役所は頭が固いですね」と苦笑いも。ゲリラ的に動き、公的支援から漏れた人を助けたいと考えている。

 「心得第4条」として、支援物資の送り方を説明した。「何が入っているかを箱に書くべし」。でなければ、仕分けに手間がかかる。書いてほしいのは、品名、個数、食品なら製造年月日、衣料品ならサイズや長袖か半袖かなど、とのことだ。事前に配布の段取りを聞いておき、一定数ごとに分けたり、いくつかの商品をセットにしたりするのも一案である。

「リサイクルショップに断られるようなものを提供されても困る。使い古しの真っ黒に焦げた鍋を持ってきた方がおられたけど、『それは違うでしょ』と言いました。『気持ちよく新生活を始めてほしい』という励ましを込めて未使用品かそれに近い提供品を“贈る”のが礼儀です」(川渕さん)

 このほか、活動が大規模になってグループが形成されれば、ボランティア団体を運営していく手腕も求められる。「活動の場に人の好き嫌いの感情は持ち込まない」「イデオロギーは問わない」などの心得も挙げた。川渕さんにとっては「ボランティアは、来る者拒まず、去る者追わず」。1度きりの学生ボランティアなども歓迎する。組織が新陳代謝を繰り返しながら、継続して支援が行われていくことが大切だと考えている。

「聞く、食べる、飲む、買う……生活すべてボランティア。『いいことしなくちゃ』なんて、気合を入れてやってはダメ。続かないです。何をするにしても、その目的に被災地支援を当てはめ、何が役に立つかを考えてみてほしい。そのうち、被災者の要望が理解できる。そうしたら、ボランティアの第一歩を踏み出せています」

 気負わず、ポイントを押さえながら、川渕さん流のボランティアで“最初の一歩”を踏み出してみてはいかがだろうか?(ライター・若林朋子)